安倍総理の外交戦略を揺るがすプーチンの重大疑惑

 

マリーナの苦難を振り返ってみよう。

もともと英国の有名な情報機関「MI6」とロンドン警視庁は、ロシアがリトビネンコ事件に国家ぐるみで関与していたことを示す証拠をつかんでいた。にもかかわらず、ルゴボイら2人を容疑者として引き渡すよう求めて拒絶されると、それ以上の追及をせず、外交問題に発展するのを避けた経緯がある。

納得がいかないマリーナは死因審問を開くよう政府に働きかけ続けた。彼女の活動を資金面で支えたのが、英国亡命中のロシア人実業家、ボリス・ベレゾフスキーだった。

容疑者、ルゴボイはモスクワで記者会見し「MI6とベレゾフスキーの仕業だ」と主張した。リトビネンコとその後援者ベレゾフスキーはともにMI6のメンバーで、プーチン大統領を政権から追い落とすための情報収集をしていた、とも語った。

ベレゾフスキーは2013年、謎の自殺を遂げる。それでもマリーナはあきらめなかった。MI6が有する証拠を出させるため公開調査を求め、内務省に拒否されると、こんどは高等法院に訴えた。高等法院がマリーナの訴えを認めたため、内務省も公開調査のための独立調査委員会を設置しないわけにはいかなくなったのである。1人の女性の闘いが英国政府を動かし、ロシア大統領の関与したに違いない犯罪を糾弾しているのだ。

ロシアではポリトコフスカヤ事件などジャーナリストの暗殺事件が多発、とくに1999年~2006年の間に126人のジャーナリストが死亡もしくは行方不明になった。このすべてにプーチンの関与があったとはいえないにしても、そのジャーナリストたちがプーチンを批判していた事実は重く受け止めねばならない。

プーチンのように荒っぽくないにせよ、安倍晋三もまた、別の方法でアンチ安倍の言論人に圧力を加えている。プーチンには安倍をひきつける磁力があるのかもしれない。

image by: 首相官邸

 

国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋

著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
<<無料サンプルはこちら>>

print
いま読まれてます

  • 安倍総理の外交戦略を揺るがすプーチンの重大疑惑
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け