今や「オタク」は、ほめ言葉。彼らが危機を救えるかもしれない業界

 

製造販売権を競う公開コンペ

例えば、コスプレはファッションにはならないのか。コスプレの課題は、知的所有権ではないか。コスプレの多くは自作であり、個人が楽しむ場面に限定されている。

もし、知的所有権を持つ者が、毎年決まった時期に、公認のコスチュームを限定販売するとしよう。ここでは、知的所有権の問題は発生しない。

ここで販売される作品は、人間が着られるフィギュアとも言える。当然、コレクションアイテムになるだろう。

あるいは、コスチュームの製造販売の権利を競うコンペを行う。世界中のアパレル企業やデザイナーがノミネートし、作品を制作する。それを公開審査するというイベントはできないか。作者や出版社、テレビ局、広告代理店だけでなく、インターネットで投票させるのもよいだろう。

そして、コンペに勝ったアパレル企業やデザイナーだけが、そのコスチュームを一年間販売する権利を有するのである。勿論、知的所有権を持つ者はロイヤリティを受け取る。

このイベントは、ある意味でファッションショーに近いものになるだろう。そこで見たコレクションは、その後、製品として販売される。

アパレル企業、デザイナーは、独自の解釈のもとに、素材を選び、ディティールを決定する。勿論、原作のイメージを損なってはならないが、その範囲ないでのクリエーションができるのではないか。

このイベントが定期的に行われ、製品がある程度の規模で販売されるようになれば、これはファッションになるだろう。

新たなライセンスビジネス

ファッションデザイナーとは、自分のクリエーションを発表し、それを受注販売する職業である。つまり、消費者はデザイナーの才能やセンスを認め、製品の品質や技術を支持しているのである。もし、才能やセンスが認められなければ、誰もコレクションに見向きもしなくなるだろう。

私は、すでにその兆候が見えているのではないか、と考えている。ファッションデザイナーが持つコンテンツより、マンガやアニメ、ゲーム等のコンテンツの方に興味があるのではないか。

もし、そうならば、コンテンツとプロダクトは分離しても良いのかもしれない。これは、ライセンスビジネスと同様の考え方だが、現在のキャラクターライセンス商品は、キャラクターの力に依存し過ぎているところに問題がある。

例えば、通常のハローキティーのライセンス商品は、必ずしも質が高いとは言えない。しかし、ハイセンスなデザイナーブランドの限定コラボになると質が高くなる。コンテンツの魅力だけでなく、それを解釈し、企画生産する能力が加わることで、より高い付加価値が生み出されるのである。

この関係は、メゾンとデザイナーの関係でもある。ディオールやシャネルというブランドには、固有のキャラクターがある。そのイメージを壊すことなく、デザイナーは新たなクリエーションを生み出す。

マンガやアニメ作品をディオールやシャネルのようなブランドに例えられないだろうか。マンガやアニメの持つキャラクター性やストーリー性を尊重しながら、デザイナーやアパレル企業はシーズン毎に製品を企画生産、販売するのだ。

この仕組みができれば、日本はコンテンツ大国になれるだろう。それが、ファッション大国につながる道ではないだろうか。

image by: PHANTHIT MALISUWAN / Shutterstock.com

 

著者/坂口昌章(シナジープランニング代表)
グローバルなファッションビジネスを目指す人のためのメルマガです。繊維ファッション業界が抱えている問題点に正面からズバッと切り込みます。
≪無料サンプルはこちら≫

print
いま読まれてます

  • 今や「オタク」は、ほめ言葉。彼らが危機を救えるかもしれない業界
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け