嘘も方便。「認知症」の家族を傷つけず介護サービスを受けてもらう方法

 

久保さんは、このお話を、みんなの参考になればと、週間東洋経済(2015.11.21)の取材にも応じ、勉強会でも話して下さいました。自分が面倒みるしかないけど、実の親じゃなかったから、少し距離を置いてクールにできる部分もあったのかもしれない…と。で、介護する者は絶対に100%を目指してはダメだと。そういいながらも、一番大変な時期、ほぼ半年は久保さんはほとんど仕事にもならず、もちろん休む余裕もない生活だったのです。

では、こういう状態がマンション内であったときに周囲はどう支えられるかです。現場の話を聞くと、やはり、認知症を認めない、介護サービスを拒否するというのが一番大変だと。それで、離れて暮らす息子や娘が駆けつけて来ても、結局、お手上げで、何もできないで、そのまま放置して帰ってしまう。そのあと、マンションにいる人間は、危険な状況や迷惑行為を放置もできず、ほんとうに困る…と。

何か手助けしたくても、本人が認知症と思われたくないと思っていたら、気を配ることが、かえって頑な拒否につながるかと思うと、手助けもなかなかむずかしい。その前に、ちょっと怪しいなと思ってもご本人か親族から状況を聞かないかぎり、初期の認知症かどうかをご近所の人間が見分けけるのは難しい…。

やはり、娘、息子が、ご近所の方に、「親に少し認知症の症状があるのでよろしくお願いします」と頼んでおくものも必要…という話になったら、会場から、それも、そう簡単ではないという話が。90歳を超え、認知症の症状があるお母さんのことで、近隣に「何かあったらよろしく」とお願いしていたら、そのお母さんは、「私の悪口を近所にいいふらしていると自分の娘を拒否するようになったと言います。

ほんと、むずかしい。

まだ、高齢の方には、「痴呆症」と呼ばれていた昔の記憶があり、自分の認知症をはずかしいものとしてできるだけ隠そうとする傾向があるのです。そして、親族にも、「はずかしい」という意識がまだまだあるのです。

でも、『家族の「認知症」を見抜く、知っておきたい5つの兆候』で数字をあげたように、長生きしたら認知症になる方が普通なのです。90歳以上の方の6~7割は認知症なのです。

認知症は、はずかしいことでもなんでもない。長生きすれば、みんながなるもの。それは、神様に、少しずついろいろなしがらみを忘れ、執着をなくし、あの世に戻る準備をする機会を与えられたんですよ。という空気を作っていくことが一番大事じゃないかな…と。

自分は…というと、そうなったら、受け入れるかな~。で、できるだけ、どんどんいろいろなことを忘れ、執着を脱ぎ捨て、子供に戻るようなそんな「認知症」でありたいな~。まだまだ難しいかな。魂磨かないと。

image by: Shutterstock

 

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