怖いのがクセになる。海外ドラマ「アメリカン・ホラー・ストーリー」徹底レビュー

 

アメリカン・ホラー・ストーリー:精神科病棟 シーズン2

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ストーリーとしてはシーズン2はシーズン1より面白かったと思う。特にまとめ方が凝っていて、救われるところもあったのがいい。

今回は50年程前の古い精神科病棟が舞台だ。監獄のような病院を修道女シスターたちが切り盛りしているところに、人を殺して皮をはぐという連続殺人鬼が患者としてやってくる

一番残酷なシスター長をジェシカ・ラングが演じていて、このドラマの中心的存在になっている。その後、連続殺人鬼の精神鑑定をする医師や女性ジャーナリストがこの舞台に加わる。

病院では何が異常で何がまともなのか、考えさせられることがいっぱいだ。当時治療と信じられていた恐ろしい行為が繰り広げられる。電気ショックや熱湯風呂、ロボトミーとか、もう治療と実験とお仕置きがめちゃくちゃなのだ。

こういうのを見ていると、心の拠り所として「まともな人」を探してしまうものだ。しかし、まともな人探しを続けながらドラマを見ていると、次々と裏切られ欺かれていくのだ。

残忍なシスター長が、従順で優しい顔をしていた部下のシスターに陥れられる。案外この残忍なシスター長がまともだったんじゃないかと、ただ心に弱みがあっただけの志の高い人だったと思ってしまったりする。

見ている人の、人を見る目が試されているような感じだ。

館と違って精神科病棟なので、物理的にも勝手に外に出られないのが恐怖を高めている。精神科病棟の休憩室には当時流行っていたシスターの歌「ドミニク」の陽気な音楽がかかっていて、陰湿な世界との対比が効いている。

しばらくは「ドミニークニックニーク~」のメロディが頭から離れなかった。私が生まれる前に流行ったらしいので、私はこの曲をよく知らなかったけれど日本でも流行ったと夫に聞いた。

ジェシカ・ラングが凄い

結局、シーズン1と同じく人間って怖いわぁ、という感想だけれど、どちらのシーズンもジェシカ・ラングがやっぱり凄い

若い時に「郵便配達は二度ベルを鳴らす」に出ている名女優さんで、確かに若い頃はきれいだったろうなというはっきりとした顔立ち。60代の彼女は、プライドが高過ぎるような独特の雰囲気を見事にコントロールしている。

登場するたびにおばさんが出す嫌~な感じを、レーザー銃のように周囲に打ちまくるのだ。シーズン1では洋館の隣人役で、いつの間にか家の中に入りこんでくる遠慮のなさがウザい

館で起こった恐ろしい事を知っているのに、自分の目的のために家族を利用するのだ。出て来る生身の人間の中で最も怖い

しかし、彼女の娘が悲劇に遭うシーンでは、複雑な心情表現が見事で、思わず涙が出てしまう。それまではあまりにヒドイ性格のこのおばさんのために同情することなんて絶対ない! と思っていたのに。

見る人を引き込むって、こういう女優ができることなんだと思った。

現在FOXでシーズン4:怪奇劇場を放映している。ジェシカ・ラングはこのシーズンでの降板を発表していて残念。しかし、4作も鬼気迫る魂の入った演技をし続けたのだから、もう充分なのかもしれない。

私はシーズン3と4はまだ見ていないけれど、ジェシカ・ラング見たさに結局見てしまうかもしれない。それこそ怖いもの見たさだ。

武田瑛夢/たけだえいむ

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