トランプ「理不尽」外交、米国第一なら日本は何番目になるのか?

 

中国は敵か味方か?

トランプは親ロシア・親プーチンだが反中国だというのが一般的な評価だが、果たしてそうか。

確かに、経済・通商面ではトランプの反中国ぶりは強烈なものがあって、選挙中には「中国製品に45%の関税をかける」と叫んだりもした。このような激情的なまでの反中国姿勢は、カリフォルニア大学アーバイン校のエコノミスト=ピーター・ナヴァロ教授の影響によるところが大きく、トランプは新設の「国家通商会議(NTC)」のトップに彼を指名した。

ナヴァロは、中国の不法な輸出補助金、通貨操作、知的財産窃盗、強制的な技術移転、保護主義的な非関税障壁などの不公正な貿易政策によって米国内の7万以上の工場が閉鎖に追い込まれた、と主張し、ちょうど1980年代にレーガン政権が日本の不公正な自動車・半導体輸出に対して制限を課したのと同様の強い措置を採るべきだと提言している。彼は『米中もし戦わば』(文藝春秋、16年11月刊)などで、オバマ政権のアジア・ピヴォット政策の失敗が中国の南シナ海進出を招いたとして批判し、「力による平和を中国に強制すべきことを説いている。彼は大統領補佐官も兼任し、経済と軍事の両面からの対中強硬路線を推進することになろう。

ところが他方では、トランプ政権の外交政策に深いところで影響力を行使しているのは、米外交政策マフィアの頂点に立つ親中派の頭目=ヘンリー・キッシンジャーだという事実がある。ブルームバーグのコラムニスト=エリ・レイクが書いているところでは(1月7日付ジャパン・タイムズ)、キッシンジャーは昨年の選挙戦最中からマイケル・フリン(現安保担当大統領補佐官)と会ってアドバイスをし、自分の元助手であるK.T.マクファーランドをフリンの副官に推挙したり、エクソン・モービル前CEOのレックス・ティラーソンを国務長官にするよう推薦したりした。キッシンジャーは選挙戦中も今も、トランプに直接電話を掛けられる数少ない周辺人物の1人だという。

言うまでもなくキッシンジャーは、旧ソ連とのデタント戦略の演出者であり、また米中国交樹立の立役者であるけれども、そのような過去の栄光ゆえにではなく、いままさに一極覇権時代が終わって、米国が「出現しつつある多極世界秩序」にいかに適合していくかが問われている時だからこそ、ロシア及び中国と新たな協調関係を築くべきだと、93歳の老骨に鞭打つように最後の一仕事に乗り出している。そして、その方向に相応しい外交トップとして、ロシアとも中国とも石油事業で関わりがあるティラーソンを推薦したのである。

つまり、「新しい同盟」すなわち「米露中の集団指導体制」の路線を推進しているのはキッシンジャー・チームであり、これと狂信的なほどの反中国強硬派であるナヴァロとはどう折り合いがつくのか、全く分からない。

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