草津の湯は硫化水素臭が漂う白濁湯というイメージがあると思うが、草津のほとんどの共同湯などの湯はほぼ透明である。 自然の酸化よりも新湯の注入によって湯が入れ替わるのが早く、フレッシュな透明感を保ったままである。
ただし、この透明な強酸性の硫黄泉は、肌あたりがキツく、刺激が強すぎる嫌いがある。 源泉かけ流しのままで入浴するには温度も熱すぎる。
そこで登場してきたのが、草津名物の「湯もみ」である。 熱すぎる源泉に板を入れて湯を揉むことで、加水せずに温度を下げ、なおかつ、空気に触れさせることで硫黄分を析出させ、湯を柔らかく、まろやかにするというものである。 実際に、湯もみをした温泉と湯もみをしてない共同湯の透明湯に入り比べてみると、圧倒的に湯もみをした湯は柔らかく、肌あたりも優しく、温度も実際温度よりも低く感じられる。
この湯もみは、フレッシュな源泉の新鮮さをできるだけ保ちながら、温度を下げて入浴しやすい肌触りにするという、180年以上続く湯治客の知恵の賜物なのである。 湯もみをしない48度の湯には到底入れないが、草津の湯で湯もみをした湯であれば、確かに熱いけれど、僕自身も入浴したことがある。
このからくりには成分量も関係していて、真湯の48度は確実に入れない。湯もみで析出した湯の花が体を包んで、熱から守ってくれるからこそ、入浴できるのである。
どうも最後のところはうまく締められたという気がしないが、温泉の鮮度、フレッシュ感についての解説は今回で終わり。
フレッシュ感とはどういうことかよくわからない、という人は、まずは冒頭に書いた肌触りを言葉で表現してみる、ということを実践して欲しいと思う。
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