トランプは正気を保てるか? 北朝鮮が目論む「平和協定」の駆け引き

 

米国の出方を韓国はどう読むか

韓国でも専門家の思考は同じレベルを走っている。尹徳敏(ユ・ドクミン)前国立外交院院長は12日付の日本経済新聞のインタビューで「米政権が軍事行動に出る可能性は」と問われて……、

2つのケースがある。トランプ政権は中国の協力を通じて問題を解決するという枠組みの中にまだいるようだが、金正恩委員長が引き続きICBMを開発し配備すれば、軍事オプションのほかに解決方法がないという状況まで行くこともあり得る。その場合、北朝鮮は韓国と日本に多大な被害を与えられるが、米国を滅ぼすことはできず、自分の政権が滅びる。

(もう1つは)北朝鮮が「ICBMを放棄できる」と話し、開発を凍結する一方で「我々の核能力をそのまま黙認してほしい、米国とは戦略的関係で平和協定を締結しよう」という取引を提案するシグナルを送れば、トランプ政権が交渉を開始する可能性がある。その可能性が70%あると見ている……。

私はもう少し高く、その可能性が90%と見ている。いずれにせよ、韓国はもちろん、中国、ロシア、欧州、そして当の米国のトランプ自身を除く国務・国防両長官、議会やシンクタンクの外交専門家まで含めて、いま世界共通の安全保障上の最大関心事は、トランプが暴れ出さないうちにどうやって首に縄をかけて、北朝鮮との交渉の入り口まで引っ張っていくかにあって、実は金正恩もすでにその新しいゲームの参加者となりつつあると言ってよい。

そういう国際的な流れとは全く無関係なところにいるのが、日本の政府・マスコミである。安倍晋三首相にとっての関心事は、もし北がグアム方面にミサイルを撃った場合、中国・四国上空を通り、その際に誤って部品が落ちてくるかもしれないので、それをPAC3で撃ち落とす態勢に万全を期すということくらいである。世界から見れば素っ頓狂に映る日本の行動である。

image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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