永江さんからの回答
地方創生=善、ということでもなくて、根本的に、創生・再生しないと地方が生きていけないから推進されているのだと思います。
わたしは以前ブログで、団塊の世代が後期高齢者に突入、65歳以上の高齢者を54%の労働人口が支える「2025年問題」を紹介しましたが、地方ではすでにその段階も超えてしまっているのが現状です。
若年層は増えず、高齢者も亡くなっていく一方で、税収がものすごい勢いで減っている。観光収入がある一部地域はさておき、大半の地域は地方法人特別税で東京都の税収が分配されているからやっていけているだけであって、とても自立しているとは言いがたいのです。
スペインのカタルーニャ独立運動しかり、イタリアのベネト州・ロンバルディア州の自治権拡大要求しかり。世界に目を向けると、財政力が強い地域の税収を弱い地域に分配してきたことへの不満から、近年、国が割れる事態にまで発展しています。田舎のほうではぶらぶら遊んでいるやつがいるのに、何で自分たちが払った税金がそいつらに行くんだよと言っているわけです。
日本は今のところまだ、地方から東京に上京してきた人が多く、税金が地方に流れることに対して大きな不満の声は上がりませんが、20年も経てば地方と何のつながりもない、東京生まれの人が増える。そうなった時にも、地方への分配を同じように受け入れてくれるでしょうか。夕方5時には店を閉めてしまうような地域に、なぜ自分たちが残業して稼いだ税金が分配されるのか、自分たちへの恩恵もないのに……と不満が募ってもおかしくない。
ちなみに2025年問題を紹介した際、その5年後には「ベッドが圧倒的に足りなくなって、年間47万人が死に場所難民」と書きましたが、実はあれは東京の問題です。
東京の福祉を立て直すため、ここまでくると東京の税収は東京で使うよう制度を戻さなくてはならないはずですが、果たして戻せるのだろうか、と。
地方の人口が今より半減していたとして、いきなり分配を無くしたら充分な社会保障費も確保できないレベルになるのは目に見えています。そうなったら本当にゴーストタウン化する。だから今から必死で、自ら観光客を呼び込み自立しようとしているのだと思います。
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