効率を求めすぎたツケ。中間層が「AI」に殺される日もそう遠くはない

 

ロボット、AIが人口減を穴埋めする?

ただ、ロボットやAIが活躍し、それらが人間にとって代わる時代となれば、またそこに大きな社会問題が登場してくるに違いない。まず単純労働で生活していた人々は、ロボットなどに働く場を奪われてしまう可能性が高い。科学と技術の発達が社会問題となってハネ返ってくるのだ。また生産効率はあがるが、ロボット社会は味気のない生活を出現させることになるだろう。

人口知能の発展・進歩も、人間がAIによる予測や確立などで能力を判断されるようになると、AIの判断を優先し人間に落第の烙印を押して救済されないケースも出てきそうだという。また芸術や美的感覚など感性の世界にも無数のパターン認識が入り込み、しかも早さが圧倒的に違うと人間は負けてしまう。過去のあらゆるデータを取り込み、瞬時に判断できるようになるからだ。アメリカのグーグルでは2045年頃までに、あらゆる分野で人間を上回るAIが登場すると見立てて開発を進めているという。

置いてけぼりになる人間

すでに米国IBMの人工知能「ワトソン」は、2011年にクイズ王と対決し勝利したし、展開のパターンが無数にあるといわれていた囲碁の世界でもAIの「アルファ碁(AlphaGo)」が世界のトップ棋士に4勝1敗で勝っている。

20年以内に日本の労働人口の49%がAIやロボットに代替されるともいわれる。まさに日本の中間層を直撃するのだ。日本の中間層の柱となっていた分野の危機は、そのまま日本社会の危機につながる可能性もあるわけだ。AIやロボットの導入は、生産性を上げ、高成長をもたらす主因になるという論調が増えているが、社会が効率一辺倒になると人間性を失い社会全体の危機にもつながることを頭に入れて対応する必要があるだろう。

(Japan In Depth 2018年1月20日)

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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