大阪の人気電器店が倒産。この店が忘れてしまった大阪人の文化とは

 

しかし、常連さんは価格の違いだけで大手に移ったわけではありません。私もこのお店の常連だったのですが、大手が来てから、値切り交渉ができなくなったのです。私が常連さんだとわかっていながら、「まけてぇなぁ~」と言っても、「これ以上は無理です!」と、非常に冷たい対応をするようになったのです。しかも、申し訳ないという態度さえ見せません。それから私も利用しなくなりました。

常連さんというものは、他店と価格を比べて買うわけではありません。馴染みのお店は、無条件で利用します。家電に関しては、値切り交渉をすることが大阪の文化なので、それを楽しみながら、欲しいものを手に入れるのです。このお店は、土着でありながら、大阪の文化を切り捨ててしまったのです。競争に勝つことばかりを考えてしまったために、値切り交渉を楽しみに来ていたお客さまが離れてしまったのです。

店頭の表示価格は高くても良かったのです。値切れることがわかっていれば、お客さまは来てくれます。値切りの末に、大手より多少高かったとしても、満足できるのです。信頼できるお店で買ったことで、安心感もあるのです。

数年後、このお店は潰れてしまいました。当然です。価格競争で大手に勝てるわけがありません。なぜ、それがわからなかったのでしょうか。小さなお店が大手に勝つには価格以外の何かが必要なのです。大阪の文化である「値切り交渉」という“お客さまとの繋がり”を大切に守っていたなら、長く存続できたかもしれません。

 

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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