米国が仮想敵ナンバーワンの中国を地経学的戦争で攻めきれぬ理由

 

国家主席任期制限撤廃の後、起こったこと

まず、「国家主席任期制限撤廃」のニュースが出たのは、2月25日でした。

中国主席、任期撤廃案…習氏の長期政権に道

読売新聞 2/25(日)18:44配信

 

【北京=竹内誠一郎】中国国営新華社通信は25日、中国共産党中央委員会が、「2期10年」と憲法が定める国家主席と国家副主席の任期について、この規定を削除する憲法改正案を、3月5日開幕の全国人民代表大会(全人代=国会)に提案すると伝えた。

トランプは3月3日、この件でジョークをいいます

習氏の終身体制「素晴らしい」、トランプ米大統領が冗談半分で発言

3/4(日)17:53配信

 

【AFP=時事】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は3日、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席が自身の終身体制の道筋をつけつつあることを称賛するような発言をした。

トランプ大統領は「いまや彼(習氏)は終身国家主席だ」「彼はそれを可能にした。素晴らしいと思う」と述べると、支持者の間から笑いが漏れた。さらに同大統領が「われわれもいつか、(終身大統領制を)試してみたらいい」と述べると、より大きな笑いが起こった。

「いまや彼(習氏)は終身国家主席だ」
「彼はそれを可能にした。素晴らしいと思う」

そして3月11日、全人代は、「国家主席任期」を撤廃する憲法改定案を可決。3月13日、トランプは、ティラーソンさんを解任しました。ティラーソンさんは、エクソン・モービルの元CEO。「プーチンの親友」として知られていました。ビジネスマンらしく、「交渉」「対話」を重視する穏健派。強硬路線のトランプさんと、しばしば衝突していた。ロシアにも中国にもあまい大物が去った。そして、ポンぺオCIA長官が、国務長官に指名されました。この方は、ティラーソンさんと比べると、かなりの強硬派です。

3月22日、トランプは、マクマスター大統領補佐官安保担当を解任。後任に、「ネオコンの超大物ジョン・ボルトンを指名しました。同日、貿易戦争勃発。トランプはこの日、500億ドル(約5.3兆円)相当の中国製品に関税を課すことを、通商代表部に指示する文書に署名しました。また23日、鉄鋼、アルミ製品の関税が引き上げられた。以後、貿易戦争で大騒ぎになっています。

トランプは、習の「終身国家主席」は、「すばらしい!」といっている。しかし、一方で、対中強硬派を政権につけ、貿易戦争を大々的に開始した。もちろん、トランプが何を考えているか、正確にわかる人はいません。それでも「やっていることを見れば、『主席任期撤廃を期に反中に旋回している」とはいえます。

現代の戦争は、「地経学」

私たちは、「戦争」と「戦闘」を同じ意味で使います。しかし、現代の戦争は、「戦闘に限定されない」ことを知っておく必要があるでしょう。

アメリカ、中国、ロシアには、敵国を破壊しつくすだけの核兵器がある。そうなると、大国同士の大規模な戦闘は起こりにくくなります。戦闘は、たとえば米ロがシリアやウクライナでやっているように、「代理戦争」に限定される。

しかし、大国間の戦争は、「別の形」で行われます。それは、「経済戦争」、ルトワックさんにいわせれば「地経学的戦争」。米ロは、クリミア併合以降、こういう形の戦争に突入しました。ロシアは、かなりダメージを受け、追いつめられています。

米中戦争は、はじまったばかりという感じです。トランプが「開戦」を決めた大きな要因の一つが、「国家主席任期の撤廃」だったのかもしれません(繰り返しますが、トランプの心の中を知ることは、誰にもできません)。

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