米国が仮想敵ナンバーワンの中国を地経学的戦争で攻めきれぬ理由

 

少し、米中関係の歴史を振り返ってみましょう。米中関係は、1970年代~1991年末まで、基本的に「反ソビエト同盟」でした。ところが、二つの事件が起こり、米中関係は危機に突入します。二つの事件とは、

  1. 天安門事件(1989年)
  2. ソ連崩壊(1991年12月)

特にソ連崩壊は深刻でした。それまで、アメリカと中国には、ソ連という共通の敵がいた。ところがソ連が消え、「なんでアメリカは、中国みたいな一党独裁国家と仲よくしてるんだ??」と、疑問と反発が出てきた。

しかし、中国は、アメリカの反中ムードを転換させることに成功します。米中関係に新しい意義」を与えたのです。それは、「中国市場は、これから世界一儲かりますよ!」。そして、実際そのとおりでした。米中関係は90年代、「反ソ同盟」から「金儲け同盟」に転化しました。

しかし、たくさんの人が「中国は、人権がない共産党の一党独裁国家である!」と反発します。この反論に対し、「国際金融資本」を中心とする「金儲け同盟派」は、「イヤ、中国は、民主主義への移行期』にあるのです!」と解説してきた。「国民が豊かになれば、自然と民主主義の方にむかっていきますよ!」と。

そうやって、ソ連崩壊から26年の月日が流れた。中国は、GDPでも軍事費でも世界2位の超大国になった。しかし、まったく民主化する気配はない。それどころか、習近平は、「1期5年」「2期まで」という規制を撤廃した。「絶対独裁者の道」を全速力で走っている。

これは、どの程度「重大事件」なのでしょうか? 答えは、「各勢力によってそれぞれ」なのです。

たとえば、国防総省は、当たり前ですが、「中国は仮想敵ナンバーワンだ!」と考えています。彼らにとって、習近平が「終身国家主席」を目指していることは、明らかに「やばい兆候」といえるでしょう。逆に、財務省にとって中国は、「米国債のお得意」。それで、習近平が終身だろうがなかろうが、「関係ない」ということでしょう。国務省は、安保にも経済にも関わっている。それで、親中と反中の間を揺れています。

トランプさんは、どうなのでしょうか? Sさんが指摘されているように、ビジネスマンであるトランプさんは、「どこの国の大統領が、何年務めようが関係ない」ということでしょう。

しかし、中国は世界2位の大国です。その国のトップが、「死ぬまで国家主席します」という意向を示せば、当然「なんのために?」という疑問がでてくるでしょう。習は、「毛沢東愛」を隠すことなく、しかも「中国の夢を実現する!」と宣言している。当然、彼が「終身国家主席」を目指すのは、「自分が中国の夢を実現するため」となる。彼が目指すのは、「中国がアメリカを追い落として世界の覇権を握ることではないか?」。ビジネスマンのトランプさんでも、このくらいのことは考えるでしょう。

私たち民主主義国の人たちは、自然に思います。

独裁 = 危険である」

そして、歴史を見ると、「そのとおり」なのです。トランプは、どう動いたのでしょうか?

print
いま読まれてます

  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け