【書評】ユニクロ潜入一年の記者が暴く、バイトらの悲痛な叫び声

 

横田はアマゾンやヤマト運輸、佐川急便などに潜入取材した経験を持つ。しかし、今回は自分を訴えた企業への潜入である。いくら末端の店舗で働くとはいえ、横田増生の本名でアルバイトの面接に及べばバレる危険性が高い。そこで一か月ほどかけ役所に通い、法的に名前を変え、住民票をとり、健康保険や免許証の名前を変えた。その名前で銀行口座を開き、クレジットカードも作った。

もうひとつのハードルが年齢である。大学生や主婦が主力のユニクロのバイトの中に50代で潜り込めるのか。想定問答集を作り、若作りに伊達メガネで面接に臨む。結果、即日採用・翌日勤務が決定した。しかし、恐るべき労働環境であった。めちゃくちゃ不定期不安定なシフトを組まれる。取り替え可能な部品扱いだ。日曜日の朝7時に出勤可能な人はいないかと店長からLINEが来る

「店長やシフト担当者は、人件費を削るだけ削ってシフトを組み、人手が足りなくなると出勤要請をかけ、人手を集める。自分たちのマネジメント能力のなさを、LINEを使ってスタッフに押しつけている。繰り返される出勤要請は、スタッフの負担を軽減しようという思いやりはほとんど見えなかった

店内では「機密情報」「守秘義務」という言葉が飛び交い、どんな些細なことでも店外では口外禁止である。社員や元社員は守秘義務契約に縛りつけられ萎縮している。アルバイトでさえユニクロに入る時は、かなり威嚇的な誓約書を書かされる。ここで描かれるのは、増田自身が体験したユニクロの労働現場の疲弊と、取材で耳にした社員、アルバイトたちの悲痛な叫び声である。

もし柳井社長が本気でユニクロをいい会社にしたいなら、社長という身分を隠し、ユニクロの現場でアルバイトとして働いてみたらどうだろうと増田は提案する。現場には、業務を改善するヒントが、山のようにうずたかく積まれたまま放置されているからだ。柳井社長よ、SLAP裁判など考えず、ブラックバイトの実態を見よ。横田は最初の店舗で独楽鼠のように働き回り、体重を10kg減らした

編集長 柴田忠男

image by:  TY Lim / Shutterstock.com

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