「妻死去時に夫が55歳以上でないと遺族年金が貰えない」は本当か

 

次に、この夫は63歳から月額83,333円の老齢厚生年金の受給権も発生します。つい最近のメルマガにも書いてきたように65歳までは一人一種類の年金しか貰えないから、金額的に遺族厚生年金月額34,652円より老齢厚生年金月額83,333円貰ったほうが得な気がしますよね。

しかしこの夫は65歳までは給与標準報酬月額30万円で働き続ける。そうすると当然、老齢厚生年金が停止される場合が出てくる。老齢厚生年金が停止されるかどうかを見てみると…。

  • 年金停止額→{(給与30万円+月老齢厚生年金額83,333円)-28万円}÷2=51,667円月停止額

つまり、老齢厚生年金額は83,333円-在職中による停止額51,676円=31,666円となってしまう。なお、この記事では省略してますが、雇用保険から高年齢雇用継続給付金が貰える場合は更に年金額が停止されてしまう場合があるからこの金額より下回ってくる事もあるでしょう。

という事は、遺族厚生年金月額34,652円を貰ったほうが得という事になる。遺族年金や障害年金は在職中でも年金が停止されることは無いし、非課税年金でもある。所得にはならない。だから、この条件で65歳まで働くとすればそのまま遺族厚生年金を貰ったほうが得という事になる。

じゃあ、遺族厚生年金と老齢の年金の併給が可能になる65歳からはどうなるのか。65歳以降の遺族厚生年金は老齢厚生年金額を超えた場合はその差額が支給される。まず63歳の年金支給開始年齢から65歳までの24ヶ月間働いた分の老齢厚生年金が増える。増えた年金額は仮に8万円とします。となると、65歳からの老齢厚生年金額は108万円となり、一方遺族厚生年金は415,834円なので完全に老齢厚生年金額のほうが上なので支給される遺族厚生年金は無い。したがって、65歳からの夫の年金総額は

  • 老齢厚生年金108万円+老齢基礎年金70万円=178万円月額148,333円

となる。

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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