捻じ曲げた解釈を押し通す「いじめ防止法」無視のダメ教師たち

 

いじめ防止対策推進法では、いじめられた児童生徒が、「いじめだと苦痛を感じていればいじめ」なのです。(同法第2条)。それを限定的に解釈する原因としては、一つには法律を読んでいない教師がいるという現実があります。

総務省の調査でも平成18年以前のいじめの定義で判断していた例が分かっています。

文科省の「いじめ対策協議会」の委員からも、「生徒指導の教員を集めての研修会で、いじめ禁止は何条に規定されているかと聞いても誰も答えられない。約80人が参加していたが、いじめ防止法を読んでいる先生はほとんどいなかった」との指摘がありました。

また、故意にねじ曲げて独自の解釈を押し通す教師もかなりいます。総務省の調査でも、数名から下着を下げられてひどく傷ついたという事案で、「単発行為で継続性がないのでいじめと認めなかった」というケースがあったことが報告されています。要するに「いじめと認めると面倒くさい」ということなのでしょう。同省の調査では、「子供のトラブルで、すぐに解消した事案を認知すると相当な数となる」等の理由で、「継続性」「集団性」「一方的」などの要素で限定解釈した事案が24%もありました

学校だけではなく、いじめ調査の第三者委員会においても法律のいじめの定義を限定解釈した事例が相次いでいます。東京都葛飾区では、2014年4月、中3男子が自殺しました。その日、顧問の教師が不在の部活中に、その中3男子生徒は身体が動かなくなってしまいました。他の部員たちは、その動けない生徒に、「霧吹きで水をかける」、「ピンポン球をぶつける」、「ジャージのズボンを下ろそうとする」などし、中3男子は直後に学校を出て自殺しました。

本年3月、第三者委員会は、「これらの一連の行為は、生徒たちの間でふざけている行為として、日常許されているとの共通認識があった」、「法律の定義を用いて形式的に評価すべきではない」として、いじめとは評価できないとしました。

この結論に、区役所には抗議の電話が相次ぎ、文部科学省も、葛飾区に対して、「行政はいじめ防止法の定義で判断すべきだと指摘しました。6月、葛飾区長は、第三者委員会の結論をくつがえし、「一連の行為はいじめに該当する」、「生徒たちの一連の行為が自殺への衝動に影響を与えた可能性は否定できない」との区の見解を発表しました。

いじめ防止対策推進法は、第1条に同法の目的として、「いじめが、被害児童等の教育を受ける権利を侵害したり、生命身体にも重大な危険を生じさせること等にかんがみ、児童等の尊厳を保持するため、いじめ防止等のための対策を、総合的、効果的に推進することを目的とする」旨定めています。つまり、いじめ被害児童生徒を救済するのが目的なのです。先生方には、徹底して被害者を守るという姿勢から逃げることのないようにお願いしたいものです。

いじめかなと思ったら、ためらわずにご連絡ください。解決に向けて、お役に立てれば幸いです。

いじめから子供を守ろう ネットワーク
松井 妙子


注:いじめ防止対策推進法

目的

 

第一条 この法律は、いじめが、いじめを受けた児童等の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命又は身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであることに鑑み、児童等の尊厳を保持するため、いじめの防止等(いじめの防止、いじめの早期発見及びいじめへの対処をいう。以下同じ。)のための対策に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体等の責務を明らかにし、並びにいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針の策定について定めるとともに、いじめの防止等のための対策の基本となる事項を定めることにより、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進することを目的とする。

 

定義

 

第二条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

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