ハイライトは「標高2,000メートルの盲腸県境と危険すぎる県境」で、26ページにもなる渾身のレポート。「盲腸県境」とは著者が命名した。「変わった形の県境クエスト」なるゲームがあれば、ラスボス級の県境は「福島県の盲腸県境」だという。福島県、山形県、新潟県の三県境、三国小屋あたりから飯豊山(2,105m)山頂を経て、御西小屋まで福島県が新潟県と山形県の間に細く(幅1.0メートル:by道路台帳)長く、続く。
県境マニアのあこがれの聖地であるらしい。著者がここにたどり着くまでが超絶の苦行だったという。なにしろ本格登山なのだ。素人には上れないので、飯豊山ガイドを雇う。坂道のきつい登山ルートで尾根まで出て、尾根伝いに上り下りしながら山小屋を目指すが、滑落事故がよく起きる剣ヶ峰は、登山初心者にとって死ぬほど怖かったという。正直、尾根の縦走をなめていたのだ。
三国小屋から先が「盲腸県境」である。朝5時から登山を始め10時間を経過している。HP5、MPゼロと形容するが、ゲームをやらないわたしには分からない。運動不足の登山ビギナーおっさんが、三県境を踏みしめて標高2,000mの木山小屋着。翌朝、飯豊山の山頂を踏む。そして、登山は下山がいちばんの山場である。著者もフラフラになって這々の体で生還したのだった。
ほかの県境物件もみな興味深く、行ってはみたいが、まあ読むだけでいいや。「埼玉、栃木、群馬の三県境が観光地化している?」は、渡良瀬遊水池そばにあり、日本で唯一、鉄道駅から歩いて10分で行けるため「歩いて気軽に行ける三県境」として新聞やテレビで報道され、県境マニアの聖地になっているとか。
わたしが行くなら、埼京線+宇都宮線+東武日光線で柳生駅か。埼京線+武蔵野線+東武日光線というルートもある。電車だけで往復3時間、2,000円以内。平日の午後に可能なプロジェクトである。わが戸田市のガイドマップで、戸田市、蕨市、さいたま市の「市境」を国道79号線のカーブ上に見つけた。週末に自転車で行ってみる。往復30分、無料。
編集長 柴田忠男
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