企業に都合よく「働かされる」フリーランス
政府は明確に「フリーランス」を定義しないまま、「フリーランス万歳!」的礼賛を続けてきました。その動きに追従するように、フリーランスで成功した人たちが、「自分のやりたいことをやるにはフリーランス最高!」とフリーランスを推奨。フリーで働くことのリスクや問題点は、ほとんど公に語れていません。
かつて「フリーター」という言葉に憧れ、「夢を追う若者」を量産したときと全く同じ構図です。「定職に就かない」あるいは「無職」と呼ばれていた人たちが、「フリーター」というカタカナ用語によって、「自由を求める人」の象徴になった。その結果、ワーキングプアが量産された。それと同じ道筋ができつつある。これは極めて危険なことです。
唯一違いがあるとすれば、フリーターは若者に限った働き方でしたが、フリーランスは今後、ミドル、シニア社員をも巻き込んだ企業に都合のいい「働かせ方」になる可能性が高いってこと。
今国会に提出される、70歳までの就業機会確保への努力義務を企業に課す「高年齢者雇用安定法」の改正案にも、「フリーランスとして働く人への業務委託による支援」も選択肢のひとつとして提示されています。
多様な働き方、柔軟な働き方という大義名分のもと、
- 「フリーランスだったら自由に時間使えるでしょ?」
- 「フリーランスの方が稼ぎ増える可能性あるしね~」
- 「フリーランスならめんどくさい人間関係もなくなるよ」
などと、あの手この手でフリーランスを迫る「新手のリストラ策」が増えるのではないか。雇用する義務を放棄したい企業の抜け穴となるのではないか。…心配はつきません。
いずれにせよ、厚労省は早急にフリーランスの定義を明確にすべきです。その上で、かつて大企業と中小企業が同志としてつながり、大企業ができないことを中小がやり、中小ができないことを大企業が担保したように、会社とフリーランスの“いい関係”を構築する法整備を進めてほしいと思います。
最後に個人的な話になりますが、フリーで20年生きてきて学んだのは「1円を稼ぐことの難しさ」です。フリーランスは確かに自由ですが、その自由には仕事がない自由、体を壊す自由も含まれていることをお忘れなく。みなさんのご意見、お聞かせください。
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