事実上の香港併合で崩壊した一国二制度。台湾は生き残れるのか?

 

習近平政権になってから、中国の経済成長率は下落の一途です。しかも2020年は新型コロナ問題で世界的に経済活動が停滞し、それは中国経済を直撃しています。いずれにせよ経済的停滞は避けられない。米中対立も激化しています。そうであれば、欧米の制裁があったところで、もともと経済の下落は避けられないということで、強硬策に打って出た可能性があります。どうせ経済的には成果をあげられないのだから、別の部分でポイントを稼いでおこうということでしょう。

西洋と中国の文化・文明の最大の違いは、法と徳(人治という言葉は日本語にはない)です。中国では天命を受けた有徳者の「一家一族」(一党一派)が天下に君臨、統率するというのが建前であり、法治とはまったく関係ありません。そのため、国家安全維持法を制定したのは、一応は法治主義だというポーズのためであって、実際は独裁者の考えひとつでどうとでもなるわけです。「一国二制度」にしても、中国が主張するのは、建前であって、本当にそれを守るつもりはないのです。

だいたい、漢、晋、明の3王朝とも、中央集権&功臣分封制を実行しましたが、全て有名無実となりました。だから歴史的に、中国では一国二制度は最初から無理なのです。

そして、香港の次に台湾を狙ってくることは容易に予想できます。とくに2022年には共産党大会があるため、習近平はそれまでになんとかして実績を積みたいと思っているはずです。蔡英文政権は自由や人権、民主主義を守るために努力する香港市民を引き続き支援していくと強調、台湾での就学や就業、投資、移住などを支援する窓口「台港服務交流弁公室」を7月1日から運用開始しています。

香港から逃げてくる金融マンなどを受け入れようという意図もあるのだと思います。香港が金融センターの地位から滑り落ちることを見越して、台湾が新たな金融センターとなるべく手を打っているともいえます。それと同時に、香港の民主活動と連帯し、国際社会を味方につけ、中国の覇権主義に対抗しようとしているわけです。

このように、アジアの政治、経済秩序は急速に大きく変わろうとしています。私は以前から米中貿易戦争は単なる経済戦争ではなく、民主主義と独裁の戦いだと主張してきました。まさに、その戦いが香港を起点に表面化してきたといえるでしょう。

image by:Jimmy Siu / Shutterstock.com

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