進次郎大臣へ直々に苦言。日本のITゼネコン「官民癒着」の問題点

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以前ご紹介した、メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で世界的エンジニアの中島聡さんのメルマガ記事「なぜ、日本政府が作るソフトウェアは使えないモノばかりなのか?」が話題となったことがきっかけとなり、中島さんのもとに小泉進次郎環境相を座長とする自民の若手議員の向けの講演依頼が来たそうです。中島さんは、自民党向けの講演で「あえて」ITゼネコンや官民癒着の問題点を指摘。その際に映し出したスライドとともに、興味深い講演内容の一部を公開しています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

IT調達とオープンソース

少し前にこのメルマガに書いた、政府のIT調達の問題点の件は、「なぜ、日本政府が作るソフトウェアは使えないモノばかりなのか?」というタイトルでまぐまぐニュース!に掲載され、話題になりましたが、この記事を読んだ方から、「小泉進次郎氏を座長とする自民党の若手議員向けに、Zoom経由で講演をして欲しい」という依頼が来ました。

せっかくの機会なので、スライドを作り、Keynote + mmhmm(ンーン) + Zoom でリモート・プレゼンをすることにしました。

スライドは全部で14枚ですが、キーとなるスライドを貼り付けておきます。

1枚目は、いつもこのメルマガでも指摘している、ゼネコン構造です。せっかく優秀な理系の学生を雇いながらも、営業と企画書作りばかりさせ、実際の開発を下請けに丸投げした結果、末端では、理系の大学など卒業していないエンジニアが、薄給で仕様書通りにコーディングをしている現状を説明しました。

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結果として起きているのが、設計とコーディングの分断です。Microsoft や Google では、設計した人が自らコードを書いていますが、それは「完璧な設計」を最初からすることは不可能で、コードを書きながら設計を柔軟に変更して行くことが大切だからです。

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最近は、日本のIT業界でも、ウォーター・フォール型の問題点も認識されつつあり、「アジャイル開発」が流行っているようですが、私の見る限り、「設計→コーディング」のサイクルを短くしただけで、一番肝心な「設計者が自らコードを書く」「コードを書きながら柔軟に設計を変更する」ことは行なっていないように見えます。

ITゼネコンの問題点はそれだけでなく、官民癒着を筆頭に様々なものがあります。それを一つにまとめたのがこのスライドです。

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そして、こんな問題の解決策として私が提案したのは、オープンソースの活用です。税金を使って作るソフトウェアは、全てオープンソース化することにより、ベンダーロックインを排除しつつ、共有・改良を続け、国民の財産として蓄積するというアイデアです。

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小泉さんには「とても論理的な説明で分かりやすかった」と言っていただけたので、何らかの成果に繋がることを期待しています。実際に実行するとなると、猛烈な抵抗をする人たちもいるでしょうから、簡単ではないと思います。しかし、本気で「IT先進国」になりたいのであれば、このくらい破壊的なことをして、既存の産業構造(電電公社時代に作られた護送船団方式)を壊す必要があるのです。

そんなことをすれば、NECと富士通が倒産し、そこで働くコードの書けない中高年の人たちが職を失うと思いますが、その痛みを伴わずに、日本のIT業界が変わることは出来ないと私は思っています。

ちなみに、mmhmm は、パワポやKeynoteのファイルをサポートしていないので、スライドを画像ファイルに変換してプレゼンすることが奨励されていますが、それではページ間のアニメーションが表示されません。

それでは面白くないので、どうやったら Keynote のプレゼン画面が直接 mmhmm に投影できるかを色々と試したところ、Keynote からは通常の “Play -> Play Slideshow” ではなく、”Play -> Play Slideshow in Window” を選び、そのウィンドウを mmhmm の “Add Screen Share” で選択すると、アニメーションも含めたプレゼンがちゃんと表示出来ることが分かりました。

連携に若干のバグがあるため、Keynote のプレゼンモードを始めてから mmhmm 側で表示するものを切り替える必要がありますが、十分に使えるので、是非とも試してください。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 中島聡 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日(年末年始を除く) 発行予定

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