2020年秋の中国を襲う「食糧不足」は日本と世界を混乱に巻き込むか?

 

中国の氾濫で

長江の長期の雨で氾濫が起きているが、三峡ダムも145mの制限水位を大幅に超えた166mになり、設計限界値175mにも迫っている。このため、最大限の放流を続けている。しかし、ダム上流地域の洪水が拡大して、上流の大都市・重慶の都心部の地下街も水没している。

一番の問題が、三峡ダムからの越水とダム決壊であるが、もし決壊となると4億人が被災することになるが、決壊するかどうかは分からないので、ここでは議論しない。あったら、大変さが増すことになるだけ。

大量放水で、現在でも三峡ダムの下流部でも、大きな面積の土地が洪水の被害を受けている。この地域は農業地域でもあり、ここでの収穫は絶望的になっている。

その上に、大量のバッタが押し寄せて農産物を食い荒らされて、中国の雲南省、湖南省、吉林省、黒竜江省で被害が広がっている。もう1つに、中国で豚コレラの被害が出て、食肉を米国などから輸入せざるを得ない状態になっている。

さらに今までの戦狼外交で、欧米にも周辺諸国にも強硬な外交をしてきたことで米国などの怒りで、特に香港の国家安全維持法施行で、米国は本当に怒り、最悪はドル決済できなくなる可能性が出ている。

この状況で、もしも南シナ海や台湾海峡で米中間の軍事的衝突が起きかねない状況になると、「戦時食糧備蓄」の観点からさらに厳しい局面を迎えかねない。現に北京では米中戦争を想定した防空訓練が始まっている。

その上に、軍事的衝突危機前にドル決済圏から追放されると穀物輸入と食肉輸入を円滑にできなくなる心配にもなってきている。

このために、習近平は「飲食の浪費現象は目に余る驚きであり、心が痛む。皿の中の食事にどれだけの人々の苦労が詰まっていることか。我が国の食糧生産は豊作年が続くが、食糧安全に対しては終始危機意識が必要だ。今年は新型コロナ肺炎のパンデミックの影響があり、さらに我々は警鐘を鳴らさねばならない」と強調した。

これにより、中国が突然、「食べ残しはやめよ」と呼び掛ける大規模なキャンペーンを打ち出した。長江の氾濫などで食料供給混乱の可能性に備え、かつ食品の輸入依存を減らすのが狙いのようだ。

一方、中国では、習近平国家主席は、公安当局の幹部が相次いで粛清している。反腐敗キャンペーン中で失脚させられた周永康氏(元政治局常務委員。無期懲役)の影響力が残っていて、次々に排除されているようだ。

これは、習近平体制に不満がある勢力がいることを示していることになる。この不満を解決するためにも習近平政権は、食料不足が起きた際でも農産物の輸入を増やすことができるように、中国の孤立化を避けたいようである。

このため、韓国への習近平主席の訪問を実現するべく、外交トップが訪韓している。韓国も米中対立で中国寄りになるようである。これにより、米日韓の3ケ国国防相協議が中止になっている。

そして、中国商務部は、米中双方は近く対話を行うことで合意しているとした。

一方、米国は、中国の苦境を見越して、中国との第2次貿易協議に入らないと宣言し、トランプ大統領は、今は中国との対話を行わないとしている。ここに米中の思惑の違いが出ている。

このため、中国は、輸入先として、仕方なくブラジルや強硬に対応していたオーストラリアからの輸入を増やすしかないことになる。

よって、今、中国は、香港の民主勢力への圧力を減らし、かつ尖閣列島に近づかないように漁船に指示を出している。これらにより、ドル決済システムからの追放を免れようとしている。米国もハイテク分野の排除はするが、農産物の中国への輸出はしたいので、ドル決済システムからの追放はしないようだ。

事実、バイデン候補は、中国に軍事的面では対抗するが、関税戦争、貿易戦争などは行わないと公約した。対して、トランプ大統領の中国制裁で、中国は米国からの農産物の輸入を止めている。

このため、前回選挙でトランプ支持の北西部の農業州でのトランプ支持は、大きく落ちている。逆の見方をすると、中国はバイデンを大統領選挙で勝たせたいようだ。

しかし、秋口になると、中国の食料輸入は、今までとは違い大規模になることが想定できる。中国以外でもインドなどでバッタの被害を受けている。このため、食料価格が上昇して、世界的な食料価格の高騰と、途上国での飢餓や暴動、内乱などが起こる可能性が出てくることになる。

日本も同様であり、秋以降、景気が悪くて、給与が減り、かつ食料価格が高騰するという事態になる。世界では戦争、内乱など不穏な空気が流れることになる。

ホワイト・スワン(世界的な予見できる危機)は、中国の食料不足が起因で起きる可能性を感じる。

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