音楽や動画の配信サービスを皮切りに、今や様々な業種で導入されているサブスクサービス。最近では飲食関連の世界でも個人店を中心に広がりを見せているが、ここに来て大手企業も本格的に乗り出す動きが出て来ている。
8日に自社のMaaSアプリ内にて、サブスクリプションチケット「EMot パスポート」の発売を開始したのは小田急電鉄。同社のリリース等によると新宿駅などの同社駅構内にある飲食店や花屋など全44店舗で買い物ができる30日間の定額制チケットで、初回購入は7800円、2回目は7500円、3回目以降は7200円と、連続して購入するとさらにお得になる料金体系のようだ。
同じく8日にはキリンビールも、会員制生ビールサービス「キリン ホームタップ」を、今春から本格展開すると発表。報道によると「一番搾り プレミアム」のほか、数種のクラフトビールなどから好きなビールが自宅に月2回定期配送され、専用のビールサーバーで注げるというサービスで、価格は月4リットルコースが8250円~、月8リットルコースが12430円~となっている。
「100%元が取れる」箱そばファンから歓喜の声
立ち食い蕎麦屋の「箱根そば」やおにぎり専門店の「おだむすび」、ベーカリーショップの「HOKUO」など、使える店が結構多く使い出があるということで「通勤者なら結構いいんじゃない?」と早くも評判となっているのが小田急の「EMot パスポート」。逆に沿線住民ではない人たちからは、「羨ましい」との声も多く見られる。
小田急、月7800円で駅そば・パン食べ放題 「EMotパスポート」 – Impress Watch https://t.co/B4VfyHMrPB
沿線在住の人がうらやましい
— .122(1切らない) (@122percent) March 8, 2021
小田急のMaaS「EMot」で 箱そば、おにぎり、パンなどのサブスク通知出た
沿線民だったらポチしてたかも https://t.co/puFx2XG5Wx pic.twitter.com/rH6ff8Craf— nk (@ul_blue7) March 8, 2021
なかでも歓喜の声をあげているのが、日頃から「箱根そば」を愛用されている皆さん。沿線住民からは「箱そば」と呼ばれ親しまれる同店といえば、揚げたてのかきあげが乗る「かき揚げ天そば」、カレー風味のコロッケが特徴の「コロッケそば」が特に人気だが、同社のリリース等を確認したところ、いずれもサブスク対象メニューとなっているようだ。
実際、420円のかき揚げ天そばなら、月に19回食べれば初回購入代の7800円を超える計算。ツイッター上では「毎朝食ってるから100%元が取れる」といった、新たなサブスクサービスのお得さと箱そばへの偏愛ぶりが垣間見れるツイートが多くあがる事態となっている。
小田急、月7800円で駅そば・パン食べ放題 「EMotパスポート」 – Impress Watch https://t.co/GdfmnJOwMO @impress_watchから
沿線に住むor勤め先がある人ならば朝と夕方にかき揚げ天そばを1杯ずつ、これを半月続けるだけで元が取れる計算になる。小田急も自前の店に客を呼ぶのに必死なんだな— ハマっ子しげみんZ (@sigemin_hamakko) March 8, 2021
おっ、ついに始まったか
マジで通勤時の朝飯は9割くらい箱根そばで食ってるから100%元が取れるやつだわ
即登録しよう— J.T. (@JT_scs32) March 8, 2021
いっぽうでキリンの「キリン ホームタップ」だが、これまではサーバーの生産体制が整わない等の問題で、限定的な募集にとどまっていたようだが、今回の報道を受けて「ついに体制が整ったか」と、本格展開を待ちわびていた方々からは喜びの声が。
新規募集するたびに募集停止になっていた生ビールのサブスク「キリン ホームタップ」。遂に今年はCMも投入して本格展開するようだ。
コロナによるイエナカシフトは大きな追い風。家で生ビールが飲めるということに早くからアクセスしているのは大きなチャンスだよね。https://t.co/hVcT9qu2WS— なんぼー | Taishi nambo (@architectizm) March 8, 2021
ついに整ったか供給体制 / “生ビールサブスク「キリン ホームタップ」本格展開、会員10万人を目指す – Engadget 日本版” https://t.co/gvf3yaSFPt
— まろやかついに来た浅利773戦国時代 (@MaroYakaZ) March 8, 2021
ただ、月4リットルで8250円~という価格設定に関しては、「缶買った方が安い感はある」「個人的には高級です」などと、ちょっとお高めではといった感想が。サブスクということでお得さを期待した向きにとっては、あくまでも本格志向のビール好きに沿ったとみられるサービス内容が、やや期待外れだった模様だ。また、専用サーバーを用いるとはいえ「店と同じクオリティが出せるのか」といった、心配の声もあがっている。
缶買った方が安い感はある笑 / 生ビールサブスク「キリン ホームタップ」本格展開、会員10万人を目指す (Engadget 日本版) #NewsPicks https://t.co/SkHbcJMzx2
— なんしょ〜 (@gorigorijapan2) March 9, 2021
このサービスは体験してみたい。(が、我慢)
週末に500缶2本で月 4Lコース月額費用税込み8250円〜は個人的には高級です…飲み屋の生ビールが飲みたい(が、我慢) / 生ビールサブスク「キリン ホームタップ」本格展開、会員10万人を目指す (Engadget 日本版) #NewsPicks https://t.co/l5jVwzD1Is— kyosuke yokoyama (@kyonn819) March 8, 2021
キリンビール、定額サービス利用者3倍超に 21年末目標:日本経済新聞
結局店で出す生の味に勝てるかってのと、キリンに飽きて他の飲みたくなったらサブスク損だよなってのが微妙 https://t.co/51e1sKn4z9— ziti3(新新新春) (@ziti3) March 8, 2021
過熱するビール業界のサブスク合戦
奇しくも同日にサブスクサービスの展開を発表した小田急とキリンだが、小田急は輸送人員の減少やホテル業の業績悪化により、今年2月に最終損益が343億円の赤字になるとの見通しを発表。またキリンは、2020年のビール系飲料の販売量で11年ぶりにシェアトップに返り咲いたという明るい話題はあったものの、決算のほうは他のビール大手と同様に減収となるなど、いずれもコロナ渦で苦境に喘ぐ状況だ。
そんな最中に両社が始めたサブスクサービス。一般的に飲食店がサブスクを導入するメリットとしては、毎月一定の売り上げを確保できることで収益が安定し、顧客情報を得やすくマーケティングに役立つ点、さらにサービスの目新しさから話題となる点も挙げられる。
ただ飲食関連の世界においても、そろそろサブスクサービスは飽和状態になりつつある状況だ。現にビール業界でいえば、オリオンビールが昨年9月より自社製品の定期宅配サービスを始めているのをはじめ、アサヒビールも今年5月から家庭向け専用サーバーの提供を始め、「スーパードライ」を2リットル容器で定期配送する予定と報じられている。
もはやサービスを始めるだけでは、顧客獲得に繋がるような展開にはならなくなっているサブスク。もちろんサービスの内容やクオリティの高さも重要だが、今回の小田急とキリンの両サブスクサービスへの反応を見るに、何よりも“コスパの良さ”が問われるというのは間違いなさそうだ。