医学博士に聞く、コロナワクチンに長期的な副作用はないのか?

 

変異種はADEを起こさないのか?

先述しましたが、デング熱は4つのタイプがあり、一つのタイプへの抗体が別のタイプの感染を増強してしまうということが分かっています。一方で、新コロナウイルスもいくつかの変異株が現れています。これらの変異種が、デング熱の4つのタイプのような現象を起こさないかという懸念が起きるのかという疑問があります。現在の新コロナウイルスへのワクチンを接種して、後に変異種のコロナウイルスに感染したら大丈夫なのか?ADEが起きて重症化するのではないかという懸念があるかと思います。

その可能性については、まずは先に述べたように、新コロナウイルスはデング熱のようなADEは起きにくいと言えます。しかし皆さんはきっと、「それでも未来にどんな変異をするかわからないだろう」と思うかと思います。それはまっとうな意見で、未来に起きる変異は予測ができない部分があり、注視が必要です。そもそもこんな新コロナウイルスが出現することだって予測はできませんでした。一方で、ある程度予測できる部分も十分にあります。そこで、現在あるデータから新コロナウイルスが変異した時のAEDの可能性について考えてみましょう。

各社からのこれまでの報告によれば、変異体に対するワクチンの有効性への見通
しはそれほど悪くはありません。B.1.1.7変異体(英国で発見された変異体)は実際には様々なワクチンが効力があり、ADEを心配し始めるレベルではないようです。南アフリカで最初に確認されたB.1.351の変異体に対しては、各種ワクチンが少し苦戦をしています。アストラゼネカに関しては南アフリカ政府がワクチン接種を中止したとのニュースもありました(その後も、ADEとは別の血栓の懸念で欧州の一部で接種の中止がされています)。ジョンソン・エンド・ジョンソンとノババックスのワクチンも同変異種に対して有効性が低下しているとの報告がありました。一方で、モデルナのワクチンは効果が他社よりも維持され、さらにファイザーもつい先日に様々な変異種に効果があることを試験管内で確認したという発表をしました。ちなみに、今の所、南アフリカではワクチン接種後に重症化したという報告は見当たりません。すなわち、この変異種に対してもADEの兆候がないことを示しています。

現時点でADEの心配があるとすれば、コロナウイルスが変異して、現在のワクチンで作られた抗体が中和できなくなった場合でしょう。しかし、そのようなことは現状は起きていませんし、なかなか起きにくいと考えられます。それは、ワクチンがスパイクタンパク質を標的にしていることが理由です。というのも、ウイルスが変異して存続するためには、スパイクが抗体から逃れつつ、かつヒトのACE2タンパク質と結合する能力を失わないようにするという、両方の条件を満たすという難関を通らなければならないからです。もちろん、その変異が100%起きないとは言えませんが、創薬する研究者がスパイクタンパク質を標的にする利点がここにあります。

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