医学博士に聞く、コロナワクチンに長期的な副作用はないのか?

 

デング熱を代表とする例

非中和抗体によるADEは絶対に起きてほしくない現象ですが、先にも述べたように通常は中和抗体が仕事をしてくれるので問題がないわけです。しかし、感染症の中には中和抗体が仕事をできず、非中和抗体によってADEが引き起こされてしまうものもあります。デング熱がその一例です。

デング熱には4つの異なる種類があります(血清型といいます)。仮にそのうちひとつ血清型のウイルスに感染し、抗体が作られて感染を乗り越えることができたとします。しかし、後に別の血清型に感染してしまうと、重篤な感染を起こすことがあります。一つの血清型に対する中和抗体は、別の型に対しては中和できないことが多く、その代わりにADEが起きてしまうのです。これを「外因性ADE」といい、非中和抗体がウイルスの細胞への侵入を助長してしまうメカニズムです。さらに、デング熱には「内在性ADE」というものがあり、これは感染した細胞内でウイルスがより多く複製されるメカニズムです。

また、ADEはHIV、エボラ出血熱、コクサッキーウイルスなど、多くの感染症で見られる現象です。また、ADEはウイルスがヒトの細胞に侵入するのを手助けするだけでなく、「補体」と呼ばれる生体防御物質の不適切な活性化を引き起こし、過剰な炎症を引き起こすことによって症状の重症化を招くこともあります。ADEに見られるように、ヒトは抗体を作ることで感染に抵抗し、一方でウイルスはその抗体をうまく利用して感染を広げようとします。ヒトとウイルスの進化の過程で行われてきた闘いでもあります。このように、ADEは今回の新コロナウイルスで降って湧いた特殊な現象というわけではなく、感染症ではかなり広く見られる現象です。

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