シティ・ポップの空を翔ける“一羽の鳥” 〜作曲家・滝沢洋一が北野武らに遺した名曲と音楽活動の全貌を家族やミュージシャン仲間たちが証言。その知られざる生い立ちと偉大な功績の数々

 

エピローグ〜空高く翔ける、“もう一つの「CITY BIRD」”

ビートたけし歌唱の「CITY BIRD」には当時、“もう一つの「シティーバード」”が存在していた。

1982年発売の滝沢のラスト・シングル『サンデーパーク』B面に収録された曲、その名は「シティーバード」。発売は、たけしのアルバム『おれに歌わせろ』のわずか4日後、1982年6月25日である。

そう、実は「CITY BIRD」という歌は、ビートたけしと滝沢がほぼ同時に発表した「競作」であった。そして、この作品は発売が延期されたままの幻のセカンド・アルバム『BOY』にも収録が予定されていた。

滝沢が歌う「シティーバード」は2015年、初CD化された『レオニズの彼方に』のボーナストラックとして収録され、33年ぶりに日の目を見たのである。

その後、ビートたけしはTVタレントとして、映画監督・北野武として、さらに日本を代表するアーティストの一人として活躍し、いまも国内外の“大空”を忙しそうに飛び続けている。

そして世界的「シティ・ポップ」ブームの中、作曲家・滝沢洋一もまた、死後15年の時を経て、彼の遺した名曲の数々を翼にのせて高い青空を見上げている。

夢を抱きしめて飛び立つ“都会の鳥”

命日近くのある晴れた日曜日。都内某所にて、ご遺族とともに滝沢の墓参に同行させていただいた。彼は今、自身の一年後に亡くなった愛猫とともに静かな丘の上で眠っている。

その墓石には「滝沢家」や「先祖代々之墓」のような文字は見当たらず、生前の趣味だったテニスのボールとラケットの絵、そしてこの言葉だけが刻まれていた。

 

“CITY BIRD” rests wings…peaceful.

“シティーバード” 羽を休めて…安らかに

 

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滝沢にとって特別な意味を持つ楽曲、そして自分自身を表す言葉、“CITY BIRD”。

妻は、彼の眠る墓石に刻む文字として迷うことなく、この言葉を選んだ。

そして、生前に彼が「時代に合わない」と語っていた多くの楽曲は今、ここにきて大きく羽ばたき始めている。

空高く翔ける“都会の鳥”は、羽を休めるどころか、ようやく宇宙の果てに向かって飛び始めたのかもしれない。

あの高く遠い「レオニズ」の彼方に向かって。

 

“Yes I live in Tokyo

空見上げ 語った夢

抱きしめて飛び立つのさ

いつか高く 遠く”

 

(滝沢洋一「シティーバード」 作詞:滝沢洋一・山川啓介) 

 

 

 

取材協力
睦月えみる
伊藤広規
新川博
牧野元昭
荒木くり子(伊藤広規office)
金澤寿和
松永良平
小澤芳一
T氏
(順不同、敬称略)

Special thanks to
滝沢家のみなさま

 

本稿を偉大なる音楽家、“CITY BIRD” 滝沢洋一氏に捧ぐ

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