活用しなけりゃ意味がない。マーケティングこそ「論より証拠」なワケ

 

3.生活者主導のネット販売

インターネットは、メーカーが直接消費者に商品を販売できる手段を与えた。

しかし、メーカーの生産体制が大量生産のままであれば、直販ビジネスでは販売数量が伸びず、工場の稼動には貢献できないだろう。

直販ビジネスは利益率は高いが、不良在庫を抱えれば損失が発生する。「いかに売れる分だけ作るか」という「生活者主導のマーケティング(マーケティング2.0)」の発想に立たなければならない。

つまり、工場のダウンサイジングやフレキシブルな生産システムの導入が不可欠になる。更に言えば、自社工場を閉鎖し、アウトソーシングに切り替えるという手段が必要になるかもしれない。

そもそも国内メーカーの衰退は、海外生産との価格競争に破れたからである。海外には、最新の機械設備と豊富な労働力がある。グローバリズムが維持される限り、海外で調達できる商品を国内で生産しても意味がない。

インターネットで自社製品を販売するとは、海外でできない製品を生産し、しかもそれを直接販売するという難事業であることを認識すべきだろう。

4.マーケティングも論より証拠

マーケティング論は、欧米のケーススタディを基本にして理論を組み立てている。もちろん、合理的な思考方法は参考になるし、日本市場にも応用できる理論もある。しかし、日本市場の特殊性から、欧米のマーケティング理論をそのまま日本に当てはめるのは無理があると思っている。

例えば、消費者、生活者の分類にしても、階層社会の欧米とは異なる。欧米は、高所得者が住む地域と貧困者が住む地域が明確に分かれているが、日本では一つの地域に混在して住んでいることが多い。

また、欧米では階層毎にブランドが分かれており、価格も段階的に設定されているが、日本では階層で分類するよりも、感性やセンスで分類されることが多い。したがって、価格設定も欧米市場のように段階的に設定されることは少ない。

マーケットを構成するのは生活者であり、生活者のライフスタイルや嗜好の違いを理解しないまま、欧米のマーケティング理論を日本に当てはめても通用しないのである。

それでも、例えば、プラダが日本市場に参入する際、3年かけて日本のファッション市場の特性、アパレル業界の構造、競合他社の状況、日本人消費者の特性等を徹底的にリサーチしたという話は参考になる。アジア市場に進出する際に、ろくにリサーチもせずに、役員が出張して街を歩いた印象だけで出店場所を決め、結局失敗して撤退する日本企業も少なくないからだ。

マーケティング論の書籍を読み、流行のマーケティング用語を覚えても、企業経営において活用しないのであれば意味はない。論より証拠なのだ。

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