泥沼の事態に発展か?スーダン軍部クーデターに見え隠れする中露の“意図”

 

そのスーダンですが、トランプ政権末期に、イスラエルとの国交を樹立し、その見返りとして、アメリカ政府からの支援(総額約8,000億円)とイスラエルからの投資(特にアグリテック)、そしてアメリカ政府によるテロ支援国家指定解除を得て、今後、民政移管に向けた動きを加速させるはずでした。

その証に、今回のクーデターの2日前の10月23日にはアメリカのフェルトマン特使が首都ハルツームを訪問し、ハムドク首相およびブルハン氏(軍民双方のトップ)と会談して、民政移管への支援について協議したばかりで、その協議の際にもブリンケン国務長官が電話越しに全面的なサポートを約束したようです。

政権発足後、ことごとくバイデン政権は、トランプ政権の外交方針を覆そうとしていますが、例外として、中国への強硬姿勢を継続・強化したのに加え、トランプ政権が行った「イスラエルとの国交樹立」方針も継続し、支援しています。

スーダンへの肩入れもその一つと言えます。

バイデン政権がスーダンへの支援を継続している理由は、東アフリカ地域に手を伸ばしてきている中国の影響力への歯止めとしての役割を期待していることもありますが、隣国エチオピアにおいて、北部ティグレ州での紛争に端を発した国内での泥沼の紛争の影響が、スーダンを含む周辺諸国に飛び火し、アフリカの角(Horn of Africa)と形容される重要拠点である東アフリカの不安定化を阻止するためのパートナーおよび拠点としてみなしていたという戦略的な意味合いもあります。

エチオピア政府が行うティグレ人への人権蹂躙および拷問への懸念と非難に加え、ティグレから流れてくる難民をスーダンに保護してもらうことで、米国はもちろん、UN機関からの支援を行うことで、スーダン政府と体制の安定化を目指してきましたが、今回、それが崩れたと言えるかもしれません。

一応10月27日には、拘束・連行されていたハムドク首相他も解放されたようですが、解放に際し、拘束当初は頑なに拒んでいたクーデターへの支持を与えたのではないかとの憶測も飛んでおり、まだまだ事態は予断を許さないと言えます。

そして、今回の緊急事態宣言下で、私が懸念を抱くのは、国際社会からのアクセスを拒む狙いがあるのか、隣国エチオピア政府がティグレに対して行ったように、軍およびブルハン議長の勢力が、全土のインターネットを遮断して情報の送受信を不可にし、おまけに軍の車両が国内のいたるところで人の移動・通行を制限している状況です。そして、それらに加え、テレビやラジオ局も軍勢力が襲撃して、支配下に置くことで、情報統制を行っているとの情報もあります。

スーダン国内での民衆の状況も大変気になりますが、同時にエチオピアのティグレ州への国際的な支援の基地にもなっているのがスーダンであり、人道支援のミッションへのさらなる悪影響も懸念される事態だと考えられ、事態は予断を許さない状況と言えます。

一説によると、ティグレイ難民用にスーダンに運び込まれていた国際人道支援物資が、今回のクーデター騒ぎの影で軍勢力に奪われたらしいとの情報もあり、それがもし事実であれば、スーダンの国際社会での評判は再度地に落ちてしまうかもしれません。

さらには、今回のブルハン議長によるクーデターの背後に、以前より噂されているエチオピア政府の影がちらついており、もしそれが事実であれば、その背後には別の隣国エリトリア、そして、同じ民族でありながら血で血を洗うような争いを長年繰り広げた南スーダンの影がちらつきます。

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