10万円給付で「クーポン」を選択した自治体は住みやすいと言えるのか?

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ワクチン対応や感染拡大時の病室確保に自粛要請の仕方や協力金の支給スピードなど、コロナ禍中の各自治体の動きには大きな差があり、自身が住む自治体と他の自治体を比較する機会も増えたのではないでしょうか。その場所、街の本当の「住みやすさ」は、自治体行政のあり方次第と訴えるのは、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さん。今回の18歳以下への10万円相当の給付では、住んでいる自治体がどのような方法を取るかで、住民寄りか政府寄りかを見極める指標になると主張。国民としては国を、住民としては自治体をしっかりと見つる必要があると伝えています。

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「10万円給付」は、国の間違った方針を変えさせた大きな事件

話題の給付金だが、その給付の方法は理論上、
(イ)10万円全額現金
(ロ)5万円現金+5万円現金
(ハ)5万円現金+5万円クーポン
の3つに分けることができる。

さすがに日本全国全ての自治体までは調査できなかったが、東京都下に限って言うなら12月20日現在、62区市町村全てが現金による給付を決定したようである。因みにその内訳は、
(イ)37
(ロ)25
(ハ)0
である。

本音を言えば(ロ)の群も、事務経費や振込手数料等のことを考えれば(イ)のやり方にしたかったに違いなかろうが、これは施策方針発表当初の大阪市への国の脅迫がじんわりと効いていて二の足を踏んだ自治体があったからであろう。

こういった特別な予算措置に限ったことではない。地方交付税という伝家の宝刀がある以上、地方は国に対して露骨には逆らえないのである。国の方が一方的におかしくてもやっぱり逆らえないのである。この(時に静かな、時に露骨な)脅迫を無視すれば何らかの形で必ず報復があることを知っているからである。この国の中央・地方官権のあり方は、思っている以上に超ブラックなのである。

それでも今回の給付金に関しては、実際にオペレーションを行う自治体同士の緩やかな団結とマスコミの力と民意の後押しによって、国の間違った方針を変えさせたという実績を作ったという点では結構な事件だったのではないだろうか。少なくとも中央政府の者には「押せば何でも通る」といった幻想を「何でも思い通りに行く筈なんてない」という現実で打ち崩されたような印象を与えたのではないだろうか。そんなに大ごとと言う訳ではないけれど、少しばかり胸のすく話である。

それに今回の給付金騒動は、図らずも我々住民(敢えて国民という言い方ではなく)に一つの評価基準を示した。即ち、自分たちの住む自治体が(イ)(ロ)(ハ)のどれを選択するかによって、
(イ)住民寄り
(ロ)住民に寄り添いつつも日和見
(ハ)中央政府寄り
というふうに分類評価できるようになったということである。自治体に一住民として住民税を納めている以上、この辺のところはしっかり見て置きたいものである。

また(ハ)のような選択をした自治体は、今後も住民の利便性よりは国(=中央政府)に尻尾を振ることを優先する可能性があるということだから本当の意味の「住みやすさ」からはおよそかけ離れたところということになる。

その場所を真に住みやすくするものは歴史でも景観でもない。行政である。この行政にこそ、教育・福祉等あらゆる問題は掛かっているのである。我々は国民として国(=中央政府)を、住民として自治体をしっかり見つめて行く必要があるのである。

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image by:kuremo / Shutterstock.com

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