北京五輪“外交ボイコット”で恥をかかされた習近平が描く「復讐劇」の中身

2022.02.01
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繰り返される台湾への領空侵犯に加え、10月には艦隊を堂々と津軽海峡を通過させるなど、昨年もエスカレートを重ねた中国による威嚇行為。一方、カネの力で支持国増加を画策するなど、その老獪さにも磨きをかけています。そんな中国は今年、どのような動きを見せてくるのでしょうか。今回、外務省や国連機関とも繋がりを持ち国際政治を熟知するアッズーリ氏は、「習近平氏にとって今年は大きな1年となる」とし、習政権が欧米や途上国、香港や台湾に対して取りうる行動を予測。さらに現在の日本をどう見ているのかについても私見を述べています。

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今年中国はどう動いてくるのか

チャイナエンペラーを目指す習近平氏にとって、今年は大きな1年となる。まずは2月に迫った北京五輪を上手く成功させることが試金石となる。しかし、メディアでも報道されている通り、既に米国や英国、オーストラリアやカナダなどが結束する形で外交的ボイコットを宣言しており、同五輪を大々的に成功させ、中国の影響力を内外に強く示したい習近平氏にとっては泥を塗られた形だ。もうそれは織り込み済みかも知れないが、中国はそれに対抗するようあらゆる策を練っていると思われる。では、今年、中国は具体的にどう動いてくるのだろうか。いくつか提示してみたい。

まず、来月に迫った五輪を巡る外交的ボイコットだが、米国に続いて英国やオーストラリアが続いたが、同じ欧米ではフランスやイタリアがそれに乗らない方針を明らかにしている。メディアでは次々にボイコットを宣言する国々が出ているかのような報道が目立つが、12月にオーストラリアやリトアニアが宣言して以降、ボイコットに乗る国は増えていないのである。バイデン政権としてはもっと多くの国がボイコットすることを望んでいただろうが、米国が思い描くようにはいっていないとも言えるのが現状だ。習近平氏としては、そこを突きたいとこだろう。すなわち、バイデン政権になって欧米諸国による対中結束が深まる中、習政権はその結束を打破するべく、ボイコットに乗らないフランスやイタリアに対して経済分野などで接近し、両国と独自の関係を維持・発展させたいところだ。

もっと拡大して言えば、今日世界では米中対立にそれほど関心を持っていない国々もアフリカを中心に多く、経済的援助やワクチン提供などを積極的に進める中国と良好関係を維持しようとする国家指導者も多いことから、習近平氏としては平和の祭典であるオリンピックにも関わらず米国などは政治を持ち込んだと伝えることで、自らのネットワークを強化したい狙いがあろう。そして、実際そのような行動を今年も引き続き積極的に取ってくることが予想される。近年、習近平氏が進める巨大経済圏構想「一帯一路」を巡っては、パキスタンで中国人や中国権益が地元の武装勢力によるテロの標的となり、中央アジアやアフリカなどでは中国に抗議する市民の行動も顕著になっているが、そのリスクを把握しながらも中国は対外的影響力の拡大を目指して経済援助やワクチン外交を推し進めるだろう。

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