北京五輪“外交ボイコット”で恥をかかされた習近平が描く「復讐劇」の中身

2022.02.01
 

また、香港への締め付けを引き続き強化し、香港の中国化を内外に強く示す行動を取ってくるだろう。バイデン政権になって以降、米国は新疆ウイグル自治区と台湾の問題で中国に圧力を掛けているが、実際問題として香港の現状は後戻りできないところまで来ている。一昨年7月、習近平氏は香港国家安全維持法を施行したが、それ以降、香港では罪状がよく分からないまま同法に違反した容疑で逮捕者が相次ぎ、香港議会では事実上民主派の破壊が進んでいる。1997年7月に香港が英国から中国に返還された際、香港の高度な自治である一国二制度を2047年まで(少なくとも50年)に維持することが約束されたが、それは25年も経たずして事実上崩壊している。自由・民主主義、資本主義の崩壊を恐れた香港市民の中には外国への移住が進んでおり、香港に拠点を置く外国企業の間でも拠点を移す動きが一部でみられる。習近平氏は香港の中国化を進めるため、今年も既成事実を積み重ねてくるだろう。同様に緊張が高まっている台湾情勢を巡っても中国の野心的な行動が続く。香港ほど自由にできるわけではないが、習近平氏は、台湾は中国の不可分の領域で台湾統一は譲れないと幾度も表明しており、台湾への経済制裁や軍事的威嚇を今年はさらに先鋭化させてくることだろう。

中国共産党は2022年秋、5年に一度の党大会を開く。通例であればトップが交代する10年に一度の節目だが、今回は習近平総書記(国家主席)の3期目続投が確実視されており、正にチャイナエンペラーへの階段をまた1つ上がることになる。3期目は確実視されてはいるが、それを内外に強く示す上でも習近平氏にとって今年は重要な年であり、妥協や弱みを示す行動は絶対に取らない。

そして、習近平氏は日本の岸田政権がどのような対中姿勢で臨んでくるかをまさに今注視していることだろう。日本は北京五輪に閣僚などを派遣しない方針だが、今後どこまで米国などと歩調を合わせてくるか、それによってどう日本に対処していくかを模索しているはずだ。今年も中国がどう動くかによって日本も大きな影響を受けることになろう。

image by: photocosmos1 / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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