ホンマでっか池田教授が解説。「右翼」「左翼」の意味と使い分け

 

グローバルキャピタリズムの結果、世界的に貧富の差が拡大しつつあるが、貧富の差の固定化を容認する勢力は右翼、貧富の差の固定化を妨げる政策を掲げるのは左翼である。日本はかつて所得税の累進課税率が高く、1974年には所得税は19段階の累進性で、最高税率は75%、住民税最高税率は18%で、なんと合計の最高税率は93%であった。それが、税率が徐々に下がり、課税段階が簡素化され、1999年には4段階、最高税率が37%になった。今は最高税率が少し上がり、45%、住民税最高税率が10%、合計55%となっている。

現在は4000万円以上の所得には一律45%の最高税率が適用されるが、1974年には8000万円以上の所得には75%の最高税率がかかったのである。高額所得者は稼いでもみんな税金に持っていかれた時代から、超高額所得者の資産はどんどん蓄積される時代に移ってきたのである。経済格差の固定化という観点からは、日本の税制は左翼的な制度から徐々に右翼的になってきたことが分かる。

ちなみに消費税は、金持ちでも、貧乏人でも税率が変わらないので、収入や資産に対する負担は貧乏人の方が大きく、どちらかというと右翼的な制度だと言えるだろう。

但し、経済的な結果平等を求める左翼的な制度が行き過ぎると、かつての社会主義国のように、経済的な自由が束縛され、新しいアイデアや技術で起業して金を儲けるといった夢が持てない息苦しい社会になりかねないので、自由と結果平等のバランスをどうとるかが、政治制度の要諦となる。

日本では、嫌中国や嫌韓国を右翼、というコトバで呼ぶことが多いが、これは国家主義的な思想で、本来の右翼の語源からはミスリーディングな使い方である。また、国力(経済力、科学技術力、外交力)の低下スピードがすさまじい日本を直視できずに「日本すごい」と言って妄想に耽っている人々を右翼と呼ぶのも、こういった人々を馬鹿にしている人々を反日の左翼と呼ぶのも、右翼、左翼の語源に照らせば、完全に間違っている。

ところで、右翼、左翼と混同されがちなコトバに、「保守」と「革新」がある。「保守」とは現在の社会制度や伝統、習慣などを極力変えない方がいいという立場で、「革新」とはより良い制度に変えて社会を変革したいとの立場である。日本では、自民党は保守政党の代表で、共産党は革新政党の代表と思われているが、例えば、憲法改定という件に関して言えば、憲法を変えたいという自民は革新で、憲法死守という共産は保守ということになる。

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