技術はエンジニアが進めると言う罠
さて、少し話を巻き戻します。意外に見落とされがちなのが技術は当然のことながら技術者(エンジニア)を中心に広まって行くということです。エンジニアが中心だから最新の技術ではまず「技術がどれほど優れているか」で優劣が決まります。ただ面白いのは利用者が必ずしも「技術的に優れているプロダクト」を選ぶとは限らないことです。
例えば(ここで例に挙げるのは気が引けるのですが)skypeは昔からあるネット通話やチャットのソリューションです。まだ「ネット通話」と言うものが一般的でなかった頃から私たちエンジニアはskypeを使い、もしネット通話やチャットが一般化するとしたら、skypeが最もその中心に相応しいとみんなが思ってました。
ところが!実際に蓋を開けてみたらLINEが、特に女子高生の中で爆発的に広まりを見せ、それに釣られる形でその両親や若者たちにもLINEは広まりました。少なくとも今ではエンジニアではない「普通」の人にとって一般的なネット通話アプリはLINEです。
LINEが強かった理由は脱力?
ではなぜLINEはSkypeに勝てたのか?その理由は「脱力のスタンプ」だと言われています。しゃべる代わりにちょっと脱力の可愛いスタンプを送り合うことができる。比較的ビジネス寄りだったSkypeにはそのような脱力スタンプは当時ありませんでした。もちろん音質や機能ではSkypeは圧倒的に有利だったのですが、問題は評価する人によってはそこが強みには感じられなかったという事です。
今更とってつけるようにフォローしますが、私は今でも毎日Skype使ってますし、LINEとSkypeは全く違うものです。ただ技術的に優れているものが必ずしも覇権を握るとはなかなか言い辛いものですね。
文字は読めれば良い?
ただ、このようなエンジニア視点と非エンジニア視点は時に大きく異なることがあります。例えば初期のMacはジョブスが大学でたまたまタイポグラフィの授業を取ってて「これからはコンピュータにも書体が必要だ」と、当時のコンピュータにとってはかなりの無理をして書体を選べる機能を搭載しましたが、Windowsでは「文字は読めればいい」と書体を選ぶ機能はありませんでした。
実際、機能の観点からだけ見れば書体を選ぶ機能を作るのは非合理的だと言えます。しかしその結果Macは「書体にこだわる」デザイナー御用達のマシンとなりました。そして、その「なんとなくかっこいいマシン」と言うイメージはその後長くAppleのブランディングに寄与した訳です。
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