しばしば「外交オンチ」と揶揄される日本ですが、それは私たちの国民性に起因する可能性が高いようです。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では起業家で大学教授でもある大澤さんが、米国の有力誌に掲載されたウクライナ戦争を巡る論文を紹介しつつ、欧米では「戦争も交渉の一形態」とみなしている実態を紹介。その上で、日本人の「けんか嫌い」が外交における弱点になっていると指摘するとともに、「柔軟かつ緻密に計算された喧嘩をする」という発想の重要さを訴えています。
この記事の著者・大澤裕さんのメルマガ
外交ゲームとしてのウクライナ戦争
ウクライナ戦争が長期化しています。
ゼレンスキー大統領は西側にさらに多くの支援、武器の供与を求めていますが、西側は必ずしも要望に応じていません。
7月29日に米国の有力な外交専門誌フォーリンアフェアーズに「ウクライナにおけるエスカレーションのパラドックス」というオースティン・カーソン氏の論文が掲載されています。
● The Paradoxes of Escalation in Ukraine
学ぶ点があります。抜粋紹介しましょう。
ロシアがウクライナに侵攻して以来、戦争の境界に関するパラドックスが浮かび上がってきた。
欧米諸国は、ウクライナ戦争においてある種の関与を慎重に避けている。それは、それがモスクワとの戦争をさらに誘発することを恐れてのことだ。
ウクライナでは、西側諸国がロシア軍を直接攻撃していないことと、各当事者がウクライナ領内での活動を限定していることの2点が、最も重要な境界線として明確である。
またNATOは、航空機の提供や義勇軍の組織化など、この制限の範囲内で行える関与でも、モスクワが挑発的と見なす可能性があるため控えている。
NATO、ロシア、ウクライナの3者がどの境界線を尊重するかしないかをめぐる複雑さは、限定戦争のルールが厄介であることを反映している。
境界は、歴史、地理、そしてさまざまな種類の戦時行為に影響される。双方は相手が何を許容するかを見極め、何がフェアなゲームで何がそうでないかの共通理解に収束する。
紛争を限定的なものにするためには、西側諸国が賢明に行ってきたように、戦争当事者は互いの境界線を徐々に試していく必要がある。
NATOは、西側の動きに対するロシアの反応を注意深く観察することで、ロシアのレッドラインを見極めながら、今後も緩やかなペースで関与を強めていくべきだろう。
解説
西側NATOのウクライナへの軍事支援がどの程度までなら「支援」とみなされ、どこから「ロシアの直接の敵」とみなされるのかは難しい問題です。
確かに言えることは、西側もロシアもお互いを「直接の敵」とした戦争にはしたくないという事です。NATOとロシアの全面戦争はまさに第三次世界大戦となるからです。
日本では「戦争は外交の失敗である」という言葉が有名ですが、欧米ではクラウゼヴィッツの「戦争は政治(外交)の延長である」の方が一般に介しています。
日本は我慢に我慢を重ねて、一挙に爆発する(戦争する)、パターンがあります。戦争が始まったら、あとは勝つか負けるかだけです。竹やりでも突っ込んでいきます。
そのあたり戦争を見る視点においても意識の差を感じます。
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