韓国は警戒。台湾との蜜月を演出する米国が「アジアから奪いたいもの」

tmsk20220822
 

8月2日のペロシ下院議長に続き14日には5名の議員団が訪台するなど、急接近を見せるアメリカと台湾。中国への牽制との見方が大勢を占めますが、米国サイドにはしたたかな狙いもあるようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、著者で多くの中国関連書籍を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さんが、台湾への接近によりアメリカが得ようとしている「実利」について解説。「現状では頭の体操」とした上で、台湾に訪れる可能性のある「皮肉な未来」を記しています。

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激しさを増す中台対立 ペロシ訪台後の米中台三つ巴の攻防は誰が優勢なのか

ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問後の中国の動きを見ていると、習近平指導部が決してアメリカの対応に幻想を抱いていなかったことが見て取れる。

とくに「台湾問題と新時代中国統一事業」(台湾統一白書)の発表のタイミングだ。アメリカのサラミ戦略的対中攻勢──内容は実は複雑だが──がそう簡単に収まることはなく、民進党の自制にも期待できないことを前提に用意されていたことがよく解る。

バイデン政権は台湾と正式な通商交渉を「初秋」にも開始すると発表した。今年6月に明らかにされた「21世紀の貿易に関する米台イニシアチブ」について、双方が「交渉が必須との相互理解に至った」という内容だ。

中国の目には米台の正式な交流が始まる一歩と映る。秋に向けて再び台湾海峡の波が高まることは避けられそうにない。

これを報じたアメリカなどのテレビ番組では、「中国が軍事演習で圧力をかけてもバイデン政権はやることはやるというメッセージ」との解説が聞かれたが、アメリカの狙いは「台湾を使った中国けん制」だけではない。

半導体サプライヤーとしての圧倒的な地位を取り戻そうという実利を狙っているのだ。

7月20日、公共放送サービス(PBS)に出演したバイデン政権のジナ・レモンド商務長官は、国内半導体産業向けの補助金を含む「CHIPSおよび科学(CHIPSプラス)法案」について訊かれ、こう答えている。

「高性能の半導体のほぼすべてを台湾から買っているアメリカは、半導体の供給網で驚くほどアジア諸国に依存している。米軍の装備すべてに必要な半導体もアジアに依存している。その点でアメリカはリスクを抱えており、国内で生産する必要がある」

レモンド長官はさらに、「520億ドルの多額の補助金は奨学金対策などほかの問題に回すべきではないかと批判もある」とのキャスター指摘に対し、「国家安全保障には値段はつけられない」と、こう続けた。

「目下、アメリカはロシア向け半導体輸出を制限し、ロシアは衛星や軍用機器を作動できなくなっている。これと同じように台湾や中国がアメリカに半導体を供給しなくなったらどうでしょう。国を守れなくなる」

アメリカの強い危機感が伝わる言葉だが、注目すべきはサプライチェーンの寸断という危機を語るなかで、中国と台湾を同列に並べている点だ。

日本人からすれば「台湾なら寸断はない」と考えるかもしれないが、アメリカはそんなに甘い国ではないのだ。

実際、台湾を「永遠の友」と呼んで安心していられるわけではない。

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