新しい資本主義をめぐる虚構
岸田首相といえば、「新しい資本主義」がその政策の中核をなす。そのコンセプトとは、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」だそうだ。しかし、それを意味するものは全くもって意味不明。
とくに岸田首相は、その新しい資本主義の意味するところのひとつとして「新自由主義からの転換」との言葉を使うが、しかしそもそも日本の歴史上、“本当に”新自由主義政策”が取られたことは一度もない。
むしろ、新自由主義政策を取り、「ダメな企業」にはさっさとご退場させてよかったのが、むしろ日本では不況期を生き抜いた「ゾンビ企業」がウヨウヨいる。
ゾンビ企業とは、健全な経営状況ではないにもかかわらず、銀行などから資金的な援助を受けることでなんとか市場で生き延びている企業のこと。
むしろ日本では、このゾンビ企業が多数存在し、市場経済の新陳代謝が阻害されていることのほうが、問題だろう。
そもそも、わざわざ“新しい”という枕詞を用いなくても、日本ではすぐにでも“まともな”資本主義政策と社会政策が求められる。
それはすなわち、教育と福祉と医療に国家がまともにカネをかけ、まともな雇用の創出と就労支援の両輪を柱にし、企業と人間とを天秤にかけるなら、「替えの効かない」人間を常に選択し、ダメな企業にはさっさと潰れてもらうことだ。
なぜ原発の再稼働・新増設に固執するのか
岸田首相は、かつてらの自身の政策の“目玉”であった原発の再稼働と新増設はやめるつもりはないらしい。
そもそも岸田首相の背後には、多額の交付金やOBの天下りなど“原発利権”を死守しようとする経済産業官僚が存在。
首相秘書官の嶋田隆(旧通商産業省、元経産事務次官)や内閣官房参与の今井尚哉(元安倍晋三首相秘書官)らが控えている。
しかし現在の日本のエネルギー危機は、自民党の完全な失政だ。 2011年の福島第一原発事故で日本中の原発が停止した結果、日本は世界と逆行し、化石燃料によりエネルギーの大半を賄わざるを得なかった。
ところが日本は原発事故から11年たった今も、エネルギーの化石依存を解消できないでいる。現在もエネルギーの約7割を化石燃料に頼り、再生エネルギーのシェアは2割にとどまっているのが現状だ。
一方、ドイツは2030年にはエネルギーの80%を、デンマークにいたっては100%を再生可能エネルギーで賄う計画を立てている。
さらに問題なのはエネルギー自給率の低さ。日本は一次エネルギーの自給率が12.1%にとどまっており、これは先進国中最低レベル。
アメリカやカナダのエネルギー自給率が100%を越えているのは別格だとしても、イギリスやフランスでも自給率は軒並み5割を越えている。
■引用・参考文献
(*1)西日本新聞 2022年10月10日付朝刊
(*2)西日本新聞 2022年10月10日
(*3)西日本新聞 2022年10月10日
(*4) 朝比奈 一郎「『何もしていない』岸田内閣、なぜ高支持率を維持できているのか https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70426」JBpress 2022年10月12日
(*5)「『嫌われない』岸田内閣 広く薄い好感 経済政策がアキレス腱か https://digital.asahi.com/articles/ASQ4Q44N5Q4KUZPS016.html」朝日新聞DIGITAL 2022年4月23日
(*6)朝日新聞DIGITAL 2022年4月23日
(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年10月16日号より一部抜粋・文中一部敬称略)
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