それぞれの企業の課題は何か
最後に成長の観点からそれぞれの企業の課題を見ていきましょう。
まずはTACです。決算短信によると2023年3月期のTACの売上予想は204億円で、当期純利益の予想は4億円となっていて、減収減益が見込まれています。理由としてはビジネスモデルの転換期と考えられます。
TACの決算説明資料によれば、2020年3月を境に、通信系の売上高の割合が教室系を超え、直近では通信が教室を上回るほどになっています。コロナもあり、対面で会うことが難しくなった昨今、通信系のニーズが増えていると思われます。
この売上構成比に対応するように、TACでは直営校の床面積を減少させることで、賃借料のカットを行っています。今後も床面積を減らすことで、4年間で8億円以上の賃借料の減少が見込まれています。
図表13
難しいところは、TACの場合、教室での受講と通信での受講がカニバリゼーション(共食い)になる可能性がある点です。KIYOラーニングは純粋に受講者数を増やし、年々売上を増やしていますが、TACの場合、既存の受講生が教室から通信にシフトすることで、必ずしも受講生の純増になかなかつながらないというビジネスモデル上の課題があります。
なぜKIYOラーニングは受講生を増やせる一方で、TACは苦戦しているのでしょうか。その理由の一つは価格帯です。例えば、中小企業診断士の講座の場合、TACでは教室受講は28万円、Web講座でも28万円と同じ料金体系です[3]。
一方、KIYOラーニングでの中小企業診断士の受講料は4万8,400円とTACの価格の2割以下で圧倒的に安いです[4]。もちろん、講義や教科書の質も関係してくるので、値段が安いだけで資格学校を選ぶということはないですが、それでもここまで価格差が開くと資格受験生、とりわけ多少勉強してきた受講生にとっては、KIYOラーニングは魅力的に映るでしょう。
このような状況において、TACも同様に価格を下げれば良いと思うかもしれませんが、そう簡単な話ではありません。なぜならば、TACが通信講座の価格を下げると教室の講座の人気がなくなってしまうからです。TACにとっては販管費を見直しながら、カニバリゼーションを回避しつつ、いかに通信講座で生徒を獲得していけるかが重要になります。