財務省のウソを垂れ流す岸田文雄の魂胆。年間1兆円の防衛増税など必要ない理由

 

そもそも、防衛費を「GDPの2%」にするというのは、1%程度である現在の2倍であり、常識外れな軍備拡張策だ。憲法に基づき専守防衛に徹すると宣言している国が世界第3位の軍事大国化してしまう。これは一体どこから来た数字なのだろうか。

この国の政治家でいちばん早く「GDPの2%」論を唱えたのは2021年9月の自民党総裁選に立候補したさいの高市早苗氏ではないかと思う。安倍政権で始まった敵基地攻撃能力の議論を念頭にしており、この総裁選で安倍元首相の支援を受けるポイントになる主張だった。

高市氏に先駆けをつとめさせたうえで、おもむろに登場したのはもちろん、安倍元首相だ。今年6月2日の安倍派の会合で「NATO加盟国の正面にあるのはロシアだけだが、日本の場合は中国と北朝鮮も加わってはるかに状況は厳しい。本来であればGDPの2%を超える額が必要になる」と述べた。

「GDPの2%」はもともとトランプ米大統領が2020年、NATO諸国など同盟国に要求した数字だ。各国の軍事費を増やせば、その分、米軍の経費を減らせるし、米軍需産業の利益にも繋がるというわけだ。

おそらく日本に対しても同じような働きかけがあったに違いない。米国は中国を封じ込めるため、日本に大きな役割を求めている。台湾に中国が武力行使するようなことがあれば、自衛隊に働いてもらい米軍兵士の命や兵器の損害を最小限に抑えたいというのが米国の本音だ。全面戦争に発展することさえなければ、米軍の損失は最小限にとどまり、米中の経済関係も、一時的にはどうであれ、持続できると踏んでいる。

こうしたオフショア・バランシングといわれる米国の戦略を安倍・菅政権は積極的に受け入れてきた。2021年12月1日、安倍氏が台湾のシンクタンクが主催するシンポジウムにオンライン参加し「新時代の日台関係」と題して講演した内容の一部。

「尖閣諸島や先島、与那国島などは台湾からも100キロ程度しか離れていません。台湾への武力侵攻は、地理的、空間的に必ず日本の国土に対する重大な危険を引き起こさずにはいません。台湾有事、それは日本有事であり、すなわち日米同盟の有事でもあります」

岸田首相もまた、安倍氏の防衛政策を踏襲した。今年5月にバイデン米大統領が来日し首脳会談をしたさい、防衛費の大幅な増額を約束した。バイデン米大統領は、中国が台湾に侵攻したら米国は台湾防衛に関与するかと記者に問われ、「イエス」と答えた。今回、岸田首相が国民に十分な説明をすることもなく防衛3文書の決定を急いだのは、来年1月にも訪米し、バイデン大統領に防衛費倍増の報告をしたいからだと見られている。

しかし、いざ台湾有事となった際に、必ず米国が軍事介入するとは限らない。米国がウクライナ戦争に介入しないのは、第3次世界大戦に発展することを恐れるからだ。同様に、核保有国であり、経済大国でもある中国とコトを構えるのは避けたいはずである。中国だって、下手に台湾に手出しして米国の介入を呼び込みたくはないだろう。経済制裁や輸出管理によるダメージは計り知れないのだ。

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