中国軍の関与は本当に無いのか?自衛隊ヘリ墜落の謎と「日中軍事衝突」の可能性

2023.04.17
 

米中対立激化がドミノ現象化させる自衛隊機墜落という「事件」

中国はそういった時間の到来を静かに待っている。むしろ、米中対立で危機感を強めているのは米国の方であり、米国内での対中警戒論は高まる一方だ。米国の調査会社ギャラップは3月、中国に関する世論調査の結果を公表し、中国に対して良いイメージを抱いていると回答した米市民が15%にまで下落した。これはギャラップ社が1979年から同調査を実施して以降で最低となった。また、同調査では米市民の6割以上が中国の軍事力と経済力が明らかな脅威と認識していることも明らかとなった。こういった現状打破が可能になる時を待つ中国と、現状維持が難しくなり焦る米国との対立がいっそう激化すれば、今回のような自衛隊機の墜落が事件としてドミノ現象化する恐れがある。

米中の力の逆転が明白になれば、中国は政治的に勢いをつけ、台湾や沖縄周辺での軍事活動をさらに活発化させるだろう。台湾侵攻や尖閣諸島の奪取、西太平洋での米軍けん制など中国には様々なオプションがあるが、米中の力の逆転の時が台湾有事のトリガーになる恐れもある。4月に入り、中米訪問の帰りにカリフォルニアに立ち寄った台湾の蔡英文総統がマッカーシー米下院議長と会談したが、それに合わせるように、中国海軍の空母山東が台湾南方のバシー海峡を通過し、台湾南東沖を航行し、西太平洋での航行演習を初めて実施した。

自衛隊が中国軍と衝突するリスクを高めるもの

また、中国軍は4月10日まで3日間の日程で台湾周辺海域において軍事演習を行い、中国軍機の中台中間線超えや台湾の防空識別圏への進入が相次いだ。これらは米中の力の逆転でさらに激化する。そして、それによって焦る米国は統合抑止を進める自衛隊に対して、これまで以上に最前線で体を張るよう強く求めるようになる。自衛隊が米軍との一体化を進めることは、裏を返せば自衛隊が中国軍と衝突するリスクが高まることを意味する。それが台湾有事か尖閣諸島奪取の時かは分からない。しかし、この海域周辺での軍事バランスの変化、逆転は日中軍事衝突の可能性を高めている。事件としての自衛隊機墜落、これを今回のケースからもっと現実的に考えるべきだろう。

image by: viper-zero / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

print
いま読まれてます

  • 中国軍の関与は本当に無いのか?自衛隊ヘリ墜落の謎と「日中軍事衝突」の可能性
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け