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これに対して中国が強調するのは、「どちらにつくのか」という選択を迫らない「緩い関係」であり、政治と距離を置き経済的な結びつきを強めようとする外交姿勢だ。中国と経済的な関係を維持することでアメリカの不興を買えば、制裁の逃げ場所としての「SCOがある」という2段構えだ。

ドル決済から排除されたときのために、人民元での決済の取り決めも多くの国との間で進められている。アメリカが価値観を掲げて排除を進め、対立や紛争を煽るのに対し、和解と経済発展に特化することで中国色を鮮明にしようとする戦略だ。

今年3月、長年反目してきたサウジアラビアとイランが北京に集い、外交関係の回復に舵を切ったことは記憶に新しい。この動きはたちまち紛争が続いてきたイエメンにも波及した。こうした中東での変化を報じる中国メディアが好んで頻繁に使う言葉がある。「外交之春」とか「和解潮」という言葉だ。

意味は読んで字のごとくだが、背後には、対立や紛争よりも仲良くして豊かになる中国式の、アメリカ式に対する優位性を意識していると思われる。問題は、足元の台湾海峡でこの中国式が通じるか否かだ。

ゴールデンウイーク中、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、レイセオン・テクノロジーズ、ゼネラル・アトミックス、ゼネラル・エレクトリック、エアロバイロンメントなどアメリカを代表する兵器メーカー25社のトップが台湾を訪れた。団を率いたのは前米太平洋海兵隊司令官スティーブン・ラダーラダー(退役中将)で、台北で開かれた「米台国防産業フォーラム」に出席するためとされたが、実際はドローンとミサイルの販売であった。

中国との対立を深める蔡英文政権には追い風となるニュースのようだが、実際はそうでもなかった。理由の一つはアメリカの意図に対して──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年5月7日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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