各地に記録的な豪雨をもたらした、台風2号による線状降水帯。近年こうした被害が日本列島で相次いでいますが、私たちに「安全な場所」は残されているのでしょうか。今回のメルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』ではジャーナリストの伊東森さんが、多発する線状降水帯のメカニズムや「内水氾濫」と呼ばれる現象について詳しく解説。さらにあらゆる地域での大豪雨発生の可能性を指摘する専門家の声を紹介しています。
台風2号の影響により「線状降水帯」が相次ぎ、各地で大雨 「内水氾濫」起こる 線状降水帯とは? 地球温暖化により増える集中豪雨
6月2日~3日にかけ、台風2号周辺の湿った空気の影響で梅雨前線の活動が活発に、四国~東海にかけ「線状降水帯」が相次いで発生した。
それにより、各地で平年の6月ひと月分の雨量を超え、とくに静岡県浜松市では24時間の雨量が500ミリ近くにまで達す(*1)。関東周辺も激しい雨が降り、東京都心でも6月の観測史上1位の大雨となった(*2)。
関東甲信地域では、初めて「線状降水帯予測情報」が発表。実際には、線状降水帯の発生発表はなかったものの、2日夜~3日午前にかけ、1時間に40ミリ以上の激しい雨を、千葉や東京、埼玉、茨城で観測した。
3日午前10時までの24時間の雨量は以下の通り。
- 静岡県浜松市春野 499.0ミリ
- 静岡県浜松市熊 491.0ミリ
- 三重県鳥羽市 490.5ミリ(観測史上1位)
- 愛知県伊良湖岬 4515ミリ(観測史上1位)
- 神奈川県箱根町 441.0ミリ(6月で1位)
東京都心では、218.0ミリと6月で1位に記録を更新。東京都心の平年6月のひと月分が168ミリほどなどで、24時間でひと月分以上の雨が降った計算になる。
過去の事例では、大雨が止んだあと、数時間後に川が増水したり、土砂災害が起きたことも。大雨により地盤が緩んでいるため、雨が止んでも災害のリスクがある。
また、しばらくは土砂災害の川の増水・氾濫に警戒が必要だ。
目次
- 線状降水帯とは
- 内水氾濫
- 地球温暖化により増える集中豪雨
線状降水帯とは
線状降水帯は、次々と発生する積乱雲が列をなし、同じ場所を通過・停滞することにより、線状に伸びた地域で大雨を降らせる現象。
1990年代から日本の集中豪雨発生時に線状の降水域がしばしばみられることが指摘されていたが、この言葉が頻繁に用いられるようになったのは、2014年8月の広島市の土砂災害以降のこと。
気象庁では、線状降水帯を以下のように定義する。
次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域
(出典:気象庁『雨に関する用語』)
線状降水帯発生のメカニズムは、「バックビルディング(後方形成)」と呼ばれる。
国立研究開発法人 海洋研究開発機構『線状降水帯の停滞が豪雨災害を引き起こす』によると、積乱雲が同じ場所で次々と発生する状況が、「バックビルディング」と呼ばれる。
2017年7月に発生した「九州北部豪雨」では、次のようにバッグビルディングが発生した。
まず東シナ海から東へ向かって、暖かく湿った大量の空気に流入が持続。すると、地形などの影響で空気が持ち上がり、雲が発生。不安定で湿潤な大気で積乱雲が発達し、上空の風の影響でそれが線状に並ぶ。
一方、かつて言われた「ゲリラ豪雨」が単独の積乱雲が発達することで局地的に激しい雨を降らせるものの、積乱雲が1時間ほどしか持続せず、雨は数十分で止む。
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