近年、国内でも激甚化の一途をたどる自然災害。今年も6月から7月にかけて各地で豪雨被害が相次ぐ事態となっています。そんな中にあって、日本の気象災害報道の姿勢に苦言を呈しているのは、米国在住作家の冷泉彰彦さん。冷泉さんはメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で今回、現在のような放送を繰り返していては命は守れないと断言するとともに、具体的な改善策を提案しています。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年7月25日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
気象災害の報道のあり方を問う
近年の日本の地上波各局における、気象災害報道の姿勢は、極めて消極的の一言に尽きると思います。
「台風接近時の中継では、こわごわ、安全なところからお伝えしています、などと断りを入れて放送するし、実際に何のインパクトもない画面を平気で流す」
「河川増水の様子は国交省の無人カメラの映像などで済ませる」
「甚大な被害が出た場合も、視聴者提供のスマホ動画などで済ませる」
「深刻な状態でも、地方局(NHK、民放とも)の土地勘のある記者等がマトモな映像を届けることはほとんどなく、東京のスタジオから『今頃、堤防が決壊しているかもしれません』などといったいい加減で呑気なアナウンスが流れる」
「依然として、『命を守る行動を』といった「日本語にはない表現」でごま
かす」
といった具合です。そこに真剣味はなく、厳しさもありません。臨場感もありません。こんな放送を繰り返していては、それこそ「命は守れない」と思うのです。
中継ができない理由はハッキリしています。まず、カスハラ体質の視聴者が「マスゴミが危険な場所で報道すると、地元に迷惑をかける」というクレームを入れてくるからです。これは「救急隊員がコンビニ行くな」的なカスハラと同質だという共通理解を作って押し返すことが必要です。
同時に、このカスハラに負けてズルズル「生中継のノウハウを喪失した」状況をしっかり押し返して、「報道のプロとして、迷惑をかけずに、インパクトのある映像をしっかり危機意識の喚起メッセージとして届ける」ための21世紀版のハイテクも駆使したノウハウを築き上げることが必要です。
いやいや、予算がないので無理というのなら、NHKはこうした災害報道に関して地方にしっかり予算を回すべきですし、民放の地方局の場合は局ごとにエリアを割り振って分担するとか、工夫して乗り切るべきと思います。
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