中国にダダ漏れ。最高機密網への侵入を数カ月も放置した防衛省「昭和の戸締り」状態

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かねてから脆弱性が指摘されてきた日本の情報セキュリティ。そんなウィークポイントを中国が見過ごすはずもなく、つい先日、ワシントン・ポスト紙に掲載された記事は驚愕に値するものでした。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、防衛省の最高機密網が数カ月に渡り中国にハッキングされていた事実を伝える記事を取り上げ、その深刻度を解説。さらに日本のIT技術の「周回遅れぶり」を指摘するとともに、マイナ保険証が中国の次なるターゲットになることは確実と断言しています。

今も絶賛ダダ漏れ中。中国にハッキングされ放題、防衛省の最高機密網

日本ではほとんどスルーされていますが、米紙ワシントン・ポストは現地時間の8月7日、日本にとって驚くべきニュースを報じました。3年前の2020年、中国が日本の防衛省の最高機密網を何カ月にもわたってハッキングしていた、というニュースです。日本でも新聞各紙が簡単な内容を報じましたが、日本人の多くがこのニュースをスルーしたため、続報は伝えられず、1週間も経たずに「過ぎ去ったニュース」になってしまいました。

しかし、あたしはとても気になったので、すぐにワシントン・ポストの元記事を読んでみました。「China hacked Japan’s sensitive defense networks, officials say(中国が日本の防衛機密ネットワークをハッキングしていたと当局者が伝えた)」という見出しで、ワシントン・ポストの国家安全保障担当記者のエレン・ナカシマ氏の署名記事でした。彼女はこれまでに、複数回のピューリッツァー賞やジェラルドローブ賞などを受賞している国家安全保障の専門家です。

で、その記事の内容ですが、当事のNSA(アメリカ国家安全保障局)の12人の担当者のうち3人からの証言として、「中国人民解放軍のハッカーグループが日本の防衛省のネットワークを完全にハッキングしていて、少なくとも2020年から2021年にかけて数カ月間、もっとも重要性の高い最高機密網にアクセスしていた」というものでした。

ま、ここまではいいのです…って、もちろん、いいわけありませんが、ここまではともかくとして、問題はこの先なのです。引き続きワシントン・ポストの記事によると、この問題が確認された2020年秋、日本のセキュリティシステムのあまりの脆弱さに驚いたアメリカ政府は、このまま日本に任せていたら大変なことになると思い、NSA長官で米国サイバー軍司令官のポール・ナカソネ氏と、ホワイトハウスのマシュー・ポッティンガー国家安全保障副補佐官を日本へ送ったのです。

まず、当事の日本とアメリカの状況を説明しておきますが、どちらも大変な時期でした。2020年9月、日本では安倍晋三首相が突然の辞任を発表し、後継者選びの自民党総裁選で菅義偉官房長官が選ばれました。一方、アメリカは大統領選の真っ最中で、2カ月後の11月、現職の共和党のドナルド・トランプ大統領を、民主党のジョー・バイデン氏が破りました。しかし、トランプ大統領は「投票はインチキだ」と大騒ぎし、あちこちの州で訴訟を起こしました。それでも、バイデン氏が翌年1月20日の就任式を迎えるまでは、トランプ氏が大統領なのです。

つまり、日本は「安倍政権から菅政権に変わった後」であり、アメリカは「大統領選ではバイデンが勝ったが、翌年1月20日の就任式まではトランプが大統領」という微妙な時期だったのです。アメリカ政府は、トランプ政権からバイデン政権への移行を進めていました。国家安全保障に関しても、それまでのトランプ政権下で国家安全保障を担当していた高官らから、次のバイデン政権で国家安全保障を担当するジェイク・サリバン氏へと引き継ぎが進められていました。

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