いっそ宇宙に捨てては?世界的エンジニアが真剣に考える「核のゴミ」最終処分問題

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「トイレのないマンション」と批判される原子力発電所。日本においてはいまだに使用済み核燃料の最終処分地が決まっておらず、最大20億円の交付金が得られる「文献調査」を受け入れたのも、北海道の2自治体だけとなっています。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、Windows95を設計した日本人として知られる中島聡さんが、この処分問題に関連する記事を取り上げ、そもそも地層処分に否定的であることを表明。宇宙に捨てる場合を試算した費用は莫大でも、これまでに中間貯蔵や再処理施設につぎ込んだ金額を考えると、馬鹿げた数字ではないと説明しています。

私の目に止まった記事:核のゴミ「文献調査」、市長が「応募しない」と発表した長崎県対馬市

長崎対馬、核ごみ調査応募せず 市長「合意形成が不十分」 │ 47NEWS

原子力発電は、使用済み核燃料の処分方法も決まらないまま始まってしまったため、「トイレのないマンション」と批判されています。すでに日本には、2万トン以上の使用済み核燃料が行き先も決まらないまま「中間貯蔵」されています。

政府は、それらの高レベル放射性廃棄物を地中に埋める地層処分をしたいと考えていますが、数万年もの長い間、危険な放射性廃棄物を本当に安全に管理できるのかどうかに関しては、疑問が多く残るところです。

日本政府は、高レベル放射性廃棄物の地層処分場の選定に必要な「文献調査」に参加した自治体に、最大20億円の交付金を支給すると発表しました。

その交付金の恩恵に預かりたいと考えた長崎県対馬市の建設業団体が提出した調査受け入れを促進する請願を受けた市議会は、市議会議員による賛成10人、反対8人で、「文献調査」を受け入れることを可決しましたが、最終的な権限を持つ比田勝尚喜市長が「応募しない」と発表した、という報道です。

高レベル放射性廃棄物の地層処分に関しては、私は否定的です。ちゃんと管理されてさえいれば安全なことはわかりますが、数万年の間には、大きな地殻変動が起こる可能性もあるし、数千年後にそもそも文明がどうなっているかすら分かりません。数千年後の文化も言葉も違うだろう人たちに、確実に危険性を知らせる方法などありません。

いっそのこと、ロケットで宇宙に捨てて仕舞えば良いと思って計算してみましたが、現時点で最も安いと言われるSpaceXのFalcon 9を使っても、1トンのゴミを宇宙空間に打ち出すのに$2.7millon(約3.5億円)かかるので、2万トンだと$50.4billion(約7兆円)かかります。

7兆円というと莫大な額に感じますが、青森県六カ所村の核燃料再処理工場にかけたお金が14兆円を超えたことを考えれば、それほど馬鹿げた数字ではないように思えます。

(『週刊 Life is beautiful』2023年10月3日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみ下さい。初月無料です)

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