フリースクールを否定した市長“謎発想”の正体。警察独特の「真っ直ぐな正義感」とは何か?

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不登校の子どもたちにとって貴重な居場所となっているフリースクールに対して、「国家の根幹を崩すことになりかねない」と発言し、大きな批判を浴びている滋賀県東近江市の小椋正清市長。なぜ小椋氏はこのような「暴論」を口にするに至ったのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』ではプリンストン日本語学校高等部の主任を務める米国在住作家の冷泉さんが、東近江市長の「警察叩き上げ」という経歴に注目し、発言が「警察独特の真っ直ぐな正義感」から来ている可能性を指摘するとともに、その「真っ直ぐな正義感」がいかなるものなのかを考察。さらに教育の専門家として不登校について解説した上で、東近江市長の発言に疑問を呈しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年10月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

警察権力は「風紀委員」なのか?警察独特の“真っ直ぐな正義感”の正体

滋賀県では、不登校対策について議論する会議があり、17日の会議の中で出席していた小椋正清・東近江市長が「フリースクールは国家の根幹を崩してしまうことになりかねない。よっぽど慎重に考えないといけない」と発言したそうです。

ちなみに東近江市というのは、旧八日市市を中心に「平成の大合併」で誕生した市です。この日の会議では、不登校対策の基本理念について議論され、報道陣に公開されたそうですが、席上、小椋市長は「文部科学省がフリースクールの存在を認めたことに愕然としている。大半の善良な市民は、嫌がる子どもに無理してでも義務教育を受けさせようとしている」とも述べたそうです。

もしかして、いわゆる「自称保守派」で高齢の保守層の票を中心に選挙戦を展開する種類の政治家が、一種の保守メッセージという「ネタ」として発言しているのかと思ったのですが、違うようです。それは、この小椋市長というのが、警察叩き上げの人物だからです。市長は76年に滋賀県警に採用されて以来、途中外務省に出向したり外事警察を長く担当したりして署長や県の防災危機管理監を努めた人物のようです。

ということを考えると、一抹の不安を感じるのも事実です。それは、今回の「フリースクールは国家の根幹を崩してしまうことになりかねない」という発言が、単なる保守向けのリップサービスではなく、警察官僚独特の真っ直ぐな正義感から来ているという可能性です。

だとしたら問題だとして批判したいという気持ちはありますが、その前に仮にそうだとしたら、とにかく「警察独特の真っ直ぐな正義感」というのは、一体何なのか、これは真剣に考えてみないといけません。

色々な問題があります。

例えば「微罪検挙」という問題があります。「理由もなく自動車のトランクに懐中電灯を入れておいたら、職質で追及された」という話があります。これは、軽犯罪法違反だというのです。つまり侵入盗防止のために禁止されている条項に違反しているというわけです。

この問題に関しては、一般の市民の理解は「日本の場合は実定法主義なので悪法も法」だというのは「仕方がない」、ということと、警察内部でも摘発件数で評価ポイントがつくのは「制度としてあるんだろう」から、捕まったら運が悪いというのが平均的だと思います。

その上で、スマホが懐中電灯になる時代にバカバカしい法律なので改正すべきだという議論をしても、議員は票にならないので動かないとか、こういう法律が放置されるのは校則で縛られてロクな主権者教育ができていないからだ、といった議論は可能です。

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