三木谷会長「544億円でお釣りが来る」楽天プラチナバンド開設計画は現実的か?

Tokyo,,Japan,-,13,February,2021?rakuten,Sign
 

10月23日、「既定路線」「茶番劇」と言われたそのままに、楽天モバイルへの700MHz帯プラチナバンドの割り当てが確定。三木谷会長は、11月9日の会見で設備投資予算の意外な少なさの根拠を示して「お釣りが来る」と胸を張りました。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは、既存3社から聞こえる不安の声を一蹴した楽天モバイルの計画が、本当に実現可能なものなのかを分析しています。

既存3社が不安視する楽天モバイルのプラチナバンド開設計画──三木谷会長「544億円で1万局。十分、お釣りが来る」

念願のプラチナバンドが割り当てられることになった楽天モバイル。しかし、競合他社の幹部からは同社が提出していた開設計画に対して懸念の声があがっていた。KDDIの高橋誠社長からは「計画がすごい遅いペース」として指摘され、ソフトバンクの宮川潤一社長は「ちょっと寂しい計画だった」と語る。

楽天モバイルでは、10年間で1万局、設備投資費は544億円という計画を立てている。つまり、1局あたり544万円の工事費しかかけないということだ。この金額に対して三木谷浩史会長は「544億円で十分、お釣りが来る」としているのだ。

競合他社と楽天モバイルの間で「プラチナバンドの基地局」に対して、大きな隔たりがあるのは間違いない。既存3社が展開するプラチナバンドの基地局は、アンテナ位置を高くするため、鉄塔もそれなりに大きいものだったりする。それだけ、設置面積も必要だ。

しかし、11月9日に開催された楽天グループの決算会見で明らかになったプラチナバンドの基地局は従来の1.7GHz帯と同じアンテナを使い、裏側に700MHzの無線機を新たに貼り付けるという構造であった。

KDDIの高橋社長が「楽天の鉄塔はギリギリで作ってこられている。同じ鉄塔にプラチナバンドの設備を積むのは苦しいだろう。新たに鉄塔が必要なのではないか」と心配していたが、楽天モバイルは、そのギリギリのところにプラチナバンドの設備を積んできてしまったのだ。

ただ、プラチナバンドの特性、メリットを生かすとなると、本来であれば、1.7GHzのアンテナよりも高い場所に設置して、遠くに飛ばすといった設置方法のほうが望ましいようにも感じる。しかし、三木谷会長は「我々のアンテナパワーは業界内でも1、2を争う位だと思っている。小さいが高性能、大きければいいというものではない」と一蹴した。

基本的には700MHzに対応したアンテナと無線機器を既存の基地局に設置するという考えであるため、1万局を544億円で作っても十分にお釣りがくるという計算なのだろう。

実際、KDDIとの新たなローミング契約も走っており、そちらのほうが効率よく、エリアをカバーできるのであれば、無理してプラチナバンドを自社で展開する必要もないだろう。KDDIとしても、ローミング契約をさらに延長することは歓迎すべきことであるため、ルーラルエリアなどはKDDIに任せつつ、KDDIがウンと言わない場所だけ、楽天モバイルが自社でプラチナバンドを吹くと言うのであれば納得できる考え方でもある。

おそらく、都心部などトラフィックが集中しつつ、ビル内など電波が入りにくい、KDDIが対応してくれない場所に楽天モバイルのプラチナバンドがあればいい。となれば、1.7GHzと同じアンテナ、指向性で問題ないのかも知れない。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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