社会主義国の優位性といえば、「独裁者」が鶴の一声で政策を命じれば、国民が一斉に行動することがあげられます。今回のメルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、英エコノミスト誌が報じた「中国のトイレ革命」を紹介。習近平が農村部のトイレを一斉に改良するよう命じたそうですが、中国ならではの大失敗もあったようです。
習近平の改革の進め方がよく分かる「中国のトイレ革命」
11月9日英誌エコノミストに中国のトイレ革命の記事が掲載されていました。
それ自体、面白い話なのですが、習近平の改革の進め方がよく分かる例だと思うのでご紹介しましょう。
「習近平、中国により良いトイレを望む」
中国の多くの地方政府にとって厳しい時代だ。経済成長の鈍化と不動産市場の低迷により、巨額の債務を処理することが困難になっている。
しかし、習近平国家主席の指示は無視できない。
有害なトイレ施設を根絶し、衛生的なトイレを建設することは、習近平氏が心から支持する目標である。2015年、彼は「トイレ革命」を呼びかけた。
まさに革命が必要なのだ。中国のトイレは原始的なものが多く、特に田舎では近年まで、穴の上にコンクリート板を敷いてしゃがむのが一般的だった。
習近平氏のキャンペーンの効果は多くの場所で見られる。観光地や交通の要所では、時には豪華なデザインの建物にも水洗トイレが設置されている。
農村部では、政府の補助金によって過去5年間に5,000万以上のトイレが改良された。
人類の歴史を振り返っても、これほど短期間に党と社会を総動員して全国規模のトップダウンのトイレ革命を実行できた国や政党はない」と、全国紙『光明日報』はある中国人学者の言葉を引用している。
「これは社会主義体制の優位性を凝縮したものだ」
解説
習近平の指示で水栓トイレが一機に進みました。中国だからこそ出来ることです。
しかし、もちろん失敗もあります。それについても記しています。
トップダウンの命令は、その実施を急ぐあまり、役人が品質の必要性をおろそかにしがちである。
水洗トイレは習近平氏のお気に入りのタイプであり、国家メディアによれば、習近平氏は視察の際、しばしば農村の住民に水洗トイレがあるかどうかを尋ねるという。
しかし、習氏を喜ばせようとするあまり、官僚たちは気候や地理を無視して水洗トイレを村人に押し付けることがある。
中国北部の厳しい冬は配管が凍結しやすく、多くの地域では水が不足しがちだ。
北東部の遼寧省の省都である瀋陽では、2016年から2019年にかけて、周辺の田舎に建設された多くの新しいトイレが寒さのために使用できなくなった。
2021年、政府が運営するニュースサービスである新華社は、瀋陽地域で過去5年間に1億元を投じて整備された8万基のトイレのうち、5万基が設計上の欠陥や施工不良、不十分なメンテナンスのために使用されなくなったと発表した。
解説
こういった失敗を、あえて公開する中国政府の意図はなんでしょうか?
記事は続きます。
党は明らかに、トイレ・キャンペーンの難点を報道する自由をメディアに与えることにした。
これは計算されたことかもしれない。不正行為やずさんな実施を暴露しても、習氏や党のイメージには影響しないだろう。
解説
トイレ設置に関する失敗は公開しても、地方政府へのけん制になりこそすれ、共産党政府への直接的な批判には結びつかないという判断です。
習近平の改革の進め方をよく表しています。
参照:
https://www.economist.com/china/2023/11/09/xi-jinping-wants-china-to-have-better-toilets
(この記事はメルマガ『在米14年&海外販路コンサルタント・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』12月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録ください)
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