コンビニ100円コーヒー「無断ラテ逮捕」の衝撃。日本で“たった80円”が警察沙汰になる複雑な事情

Osaka,,Japan,-,Nov,16,,2019:,Hand,Taking,The,Take
 

ここ数年、コンビニエンスストアのセルフ式コーヒーマシンで購入金額以上の飲料を注ぎ、窃盗の疑いで逮捕されるという「事件」が相次いで報道されています。そんな現状を取り上げているのは、米国在住作家の冷泉彰彦さん。冷泉さんはメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で今回、なぜ日本では被害額数十円ほどの案件が警察沙汰になるのかについて考察するとともに、このようなニュースを取り上げるメディアに対して苦言を呈しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年12月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

なぜ日本ではコンビニのコーヒーマシン「不正購入」が警察沙汰になるのか

コンビニのコーヒーマシンというのは、自販機ではありません。自己申告でレジでカネを払って、その上でマシンからコーヒーを注ぐシステムです。あくまで自己申告ですから、少しのカネをケチって、コーヒーを「パクる」人がいるようです。

例えば、Sのカネを払って、Lをネコババするという場合です。最近では、コーヒーを買って、ラテを入れた客が摘発されていました。その摘発ですが、オーナーが出てきて怒ったり、出禁にするというケースも多いようですが、警察を呼ぶという例も意外と多数あるようです。

アメリカで暮らしている自分としては、例えば最近報道されたように、110円のコーヒー代を払って、190円のラテを入れたという「80円」のために、警察官が出動したということ自体が驚愕です。日本に住んでいる方でも、私ほどではないにしても、80円で警察沙汰というのには違和感を持つ方もあるのではと思います。

ではどうして警察沙汰にするのかということですが、恐らく複雑な事情があるのだと思います。考えられることをメモしておきます。

1)そもそも飲料の値段が高いのだと思います。アメリカだと、ソーダのファウンテンマシン(ボタンを押して注ぐやつ)は、多くのファーストフードで「セルフ」対応となっていて、しかも原則は「リフィル(お代わり)」自由になっています。ですから、バーガーとソーダを買ったら、まず1杯をバーガー食べながら飲んで、お代わりしたら、それを持って車で飲みながら運転するというような人が大勢います。

では日本の場合はどうかというと、まずコーラ飲料などの原液の価格が、アメリカ国内と日本では1桁違うらしいのです。日本法人の運営コストと、巨額なロイヤリティー料金が乗っているらしいので、日本ではソーダは高価。またコーヒーの場合は、アメリカは基本薄いし、味にもうるさくないが、日本は単価高いということはありそうです。

2)不正があってロスがあった場合に、コンビニのオーナーにペナルティが行くシステムがありそうです。つまり液体の原価の差額だけでない、ペナルティです。その結果、オーナーに不正摘発が義務付けられているのであれば、どう考えても本部が課すこととしては過酷であり、優越地位を使った不正取引のようにも思うのですが、どうなんでしょうか?仮にそうだとして、本部が厳格な理由が、厳格すぎる原価管理システムにあるのかもしれません。

3)オーナーが就寝中で、バイトのみの対応だと、リスク管理の観点から注意するとか出禁にするといった「民事的対応」ではダメで、即警察を呼ぶというのがマニュアルにある可能性があります。アメリカのように銃で武装していなくても、客が暴れて事件になると、ブランドも店も不幸になるから、ということはありそうです。

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