学習能力ゼロ。原発という「過去最大の災害関連死要因」を動かす無能政府

 

接死の4倍もの命が災害関連死で奪われた熊本地震

この「長岡基準」は、2011年3月の「東日本大震災」でも、多くの市町村が参考にしました。しかし「東日本大震災」は被害の規模も避難の実態も「新潟県中越地震」とは大きく異なっていたため、震災から半年を過ぎたケースでも、各自治体は個々の状況を踏まえて認定審査をしていると言います。

ここで、「東日本大震災」で最も被害の大きかった東北3県の直接死と災害関連死の人数を見てみましょう。これは復興庁の調査による最新のデータ、2023年3月のものですが、左が直接死、右が災害関連死の人数です。

岩手県 4,675人 470人
宮城県 9,544人 931人
福島県 1,614人 2,337人

これを見れば一目瞭然ですが、岩手県と宮城県の災害関連死が直接死の1割程度なのに対して、福島県だけは直接死より災害関連死のほうが遥かに多いのです。その原因は、今さら説明する必要もありませんが、福島第1原発事故なのです。こうした災害関連死は、避難生活が長期化すれば増加すると言われていますが、それでは、同じく復興庁の2023年3月のデータから、現在の避難者数を見てみましょう。

岩手県 895人
宮城県 1,924人
福島県 27,394人

こちらも一目瞭然ですね。原発事故という人災によって故郷を追われ、震災から13年経った今も自分の家に帰れない人たちが、福島県には2万7,000人以上もいるのです。ひとくちに13年と言っても、震災当時に小学1年生だった子どもたちは、今年で20歳になるのです。そして、この突出した福島県の避難者数は、そのまま災害関連死の人数に反映されているのです。

さらには、これは書くことを躊躇(ためら)うほど悲しい事実ですが、この2,337人という福島県の災害関連死のうち、少なくとも150人以上は「自死」なのです。原発事故によって故郷を奪われ、仕事を奪われ、生活を奪われ、生きる希望を失った多くの人たちが、自らの命を絶ったのです。

福島県のある酪農家は、牛小屋の壁にペンキで東京電力と政府への恨みを書き殴り、牛小屋の中で首を吊りました。死後2週間も経ってから仮設住宅で遺体が発見された高齢女性は、1人用のコタツの上に当時の安倍政権への恨みが書かれた遺書が残されていました。

災害関連死を考える上では、原発事故が原因の福島県は特例なので、自然災害のみのケースに戻しますが、特に極端な例が、2016年4月に発生した「熊本地震」です。「熊本地震」では、地震による直接死は50人ですが、その後、直接死の4倍を超える218人が災害関連死で亡くなっているのです。この地震では、18万人を超える住民が避難し、県内に約900カ所の避難所が開設されましたが、必要数の仮設住宅が整備されるまで、最長で7カ月以上の避難生活が続きました。

複数の病院や高齢者施設も被災したため、多くの高齢者を避難・転院させなければならず、その移動中に死亡した高齢者が少なくとも27人。また、プライバシーのない避難所を嫌い、避難所の周囲に停めたマイカーで車中泊していた被災者のうち、エコノミークラス症候群で亡くなった人が少なくとも33人と報告されています。しかし、これは一部調査の結果なので、実際には、さらに多くの人たちが同様の原因で亡くなっていると思われます。

震災以外でも、2015年9月の「関東・東北豪雨」では、死者21人のうち約60%に当たる13人が災害関連死と認定されました。また、2019年5月に発生した「令和元年房総半島台風」では、何と死者13人のうち、ほぼ全員と言っても過言ではない12人が災害関連死と認定されています。これらはすべて、当事の安倍政権の対応の遅れが原因と指摘されています。

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