米国では「デモ参加者は採用しない」という脅しが通用しない
もう一つ、日本との大きな違いは逮捕歴などが就職には響かないという点です。
まず、逮捕歴を理由に採用を拒むことは法的に禁止されています。
その一方で、今回の一件では、多くの金融機関などは「デモ参加者は採用しない」という脅しをかけています。
ですが、そのように脅している企業に限って、学生たちが「ユダヤ系財閥だ、大学は縁切りを」と非難している企業とカブるので、ほぼ意味はありません。
反対に、シリコンバレー系になると、デモ参加者の持っているカルチャーとはむしろ親和性が出てくるわけです。
基本的に「いちご白書をもう一度」的な日本のカルチャーとはこの辺が全く違います。
そんなわけで、むしろエリート校になればなるほど、この種のデモには熱心になって当たり前という雰囲気が出てきているのです。
そんな中、本稿の時点ではカタールのドーハで行われているガザ和平交渉が大詰めとなってきました。
アメリカではこのニュース、意外なほど扱いが小さく、もしかしたらワシントンのどこかの筋が「デモの影響力」を恐れているのかもしれません。
それはともかく、5日までは「何もかもはハマス次第」と言われていた和平案を、ここへ来てハマスは受諾したようです。
カードはイスラエルに回りました。徹底的にラファ侵攻を進めるとして、一歩も引かないネタニヤフ政権ですが、果たして受諾というカードを切れるのか、まさに、この瞬間に歴史は動くかもしれません。
仮に歴史が動いたとしたら、デモ隊の若者たちの行動は、その動きを後押しした何らかの要素として、歴史に残るかもしれないのです。
※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2024年5月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ
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