TikTok、インスタリール、YouTubeショートなどの「ショート動画」が、クリエイターの表現の場として広がり、いまやインフルエンサーのみならず多くの芸能人や大企業、行政までもが参入しています。ビジュアル、テキスト、音声を駆使したショート動画は、単なる短いYouTube動画とは異なり、ユーザーが短時間で多くの情報を求める時代に最適な発信ツールとして世界的にその地位を確立したと言ってもいいのではないのでしょうか。
そこでMAG2 NEWSではショート動画で成功したクリエイターへのインタビューを行い、彼らの成功の秘訣を探る直撃取材を敢行。彼らがいかにして動画をバズらせたのか、その手法を丸裸にして具体的なバズり方を伝授。これらをルポルタージュ風にまとめたオリジナル潜入企画「バズるショート動画の裏メソッド」をお楽しみください。
ほぼしゃべらずにTikTokフォロワー970万人超え、謎クリエイターの正体
それは一通のメールから始まった。
ここはMAG2編集部。いま隆盛を極めるSNSの時代よりもはるか以前、Webメディアやブログ発信もままならない2000年以前より個人クリエイターたちの情報発信をサポートしてきた。そんなクリエイター発信の裏情報を調査するルポライターのタキバヤシは、今日も世間には公表されないミステリアスなニュースを探していた。
そんな編集室にある一通のメールが寄せられる。
室長・花輪:おい、タキバヤシ、これを見ろっ!
室長・花輪:な、なんだってーーーー!
タキバヤシ:いやいや、なんだってーのリアクション早すぎですよ花輪室長。そもそも自分でふっといてなに驚いてるんすか。てかいまもう令和。この手の元ネタはZ世代にはわからないですって。
室長・花輪:元ネタさんに仁義きっといて。
タキバヤシ:いやいや、仁義きるってどういう意味ですか?
室長・花輪:タキバヤシくん、我々のミッションはクリエイターのサポートが一丁目一番地。この謎をなるはやで調査してペライチでまとめてくれたまえ。
タキバヤシ:さっきからナチュラルに昭和のビジネス用語を塗り重ねるのやめてくれませんか?確かにクリエイターのサポートが最重要課題ですがそれを急ぎで一枚の紙にまとめるなんて無理ですよ。それにこれだけじゃどこを調査すればいいかもわからないですって。
室長・花輪:おい、タキバヤシ、これを見ろっ、続きがあるぞ!
室長・花輪:ほぼ、、、?
タキバヤシ:しゃべらずに、、、?
室長・花輪:970万人(ゴクリ)
タキバヤシ:1470万人(ゴクリ)
室長・花輪:な、、、
タキバヤシ:な、、、
花輪・タキバヤシ::な、なんだってーーーー!
タキバヤシ:ノリで付き合いましたけどやめてくださいって。
室長・花輪:じゃぁボールは君に渡すからエイヤで取材、行って来い!
タキバヤシ:気合と根性(エイヤで)ってことすか…。
世界でバズるのに、言葉はいらない
ー6月某日、都内某所
タキバヤシ:あれ、花輪室長も来たんですね。
室長・花輪:まぁあれだ。この記事は突貫工事で仕上げないといけないから全員野球でやり切るぞ。
タキバヤシ:急ぎ案件だから力を合わせて乗り切ろうって…いちいち昭和用語挟むのやめてくれません?
はやたく:あなたたちが、MAG2編集部の方々ですか?
タキバヤシ:あなたは、もしや、、、?
はやたく:はやたくと申します。今日はよろしくお願いいたします。
タキバヤシ:あの早速ですが、ほとんどなにもしゃべらないのにTikTokで970万人、YouTubeでは1470万人のフォロワーがいるという、にわかに信じがたい噂を聞きつけたのですが本当ですか?
はやたく:なにもしゃべらない?ノンバーバルというんですよ。
室長・花輪:m-floのアーティストのことですか?
タキバヤシ:それはバーバル!って花輪さんはちょっと黙っていてください。ノンバーバルというと?
はやたく:言語に頼らない表現やコミュニケーションのことです。
タキバヤシ::言語に頼らない表現というのはどういうことですか?
はやたく:セリフがあったり説明的に喋る動画というよりは、表情やジェスチャー、演技など、誰が見ても視覚的にわかるような動画といいますか。
@wd7754 CARDBOARD RAMEN!
タキバヤシ:なぜそれでフォロワーが増えるんですか?
はやたく:実は日本国内より海外のフォロワーが多いんです。
タキバヤシ:か、海外…?
はやたく:はい。インドやアメリカ、インドネシア、ブラジルなど、人口の多い各国にたくさんフォロワーがいるんです。
タキバヤシ:なぜ海外から?
はやたく:TikTokのアルゴリズムかはわからないですが、日本語で話していたり日本語字幕が付いていると日本国内向けの動画とみなされ、国内向けのユーザーさんのおすすめにのるんですよ。
タキバヤシ:レコメンド機能ってやつですか。
はやたく:そうなんです。それが言語に頼らない表現だと世界中のユーザーさんにレコメンドされるようになっているらしく。
タキバヤシ:そんなカラクリが、、、
ある日、目覚めたら鬼バズり、そして海外へ
はやたく:僕の場合は、一番初めはボーイズラブ的な動画でバズったんですよ。再生回数が1000万回を超えるという。
タキバヤシ:1000万回!
はやたく:そうです。それをノンバーバルと組み合わせまして。
室長・花輪:お?2つをガッチャンコさせたんですね。
タキバヤシ:(無視)どういう感じだったんですか?
はやたく:もともとは男友達と2人で動画撮ってたんです。その動画での僕たちの顔がたまたま近かったみたいで。
タキバヤシ:顔が近い?
はやたく:ええ。コメント欄にも「もっと見つめ合ってほしい」とか、「もっと距離を近くしてほしい」といった要望が殺到したんですよ。
タキバヤシ:なにか妄想を膨らませるような内容だったんですね。
はやたく:そうなんです。それでコメント欄を参考にもっともっとファンが喜ぶような動画を作るようになっていったんです。セリフはいらないんだなって。
@wd7754 過激バージョン#BL #腐女子#浴衣 ♬ ポーズチャレンジ – YUYA OHTANI/ももくん
タキバヤシ:1000万回再生ってどんな気分だったんですか?
室長・花輪:億千万だったら胸騒ぎするんだけどな。
タキバヤシ:いやエキゾチック・ジャパンの話しは今聞いてないから!
はやたく:本当に映画みたいなんです。朝起きたら何百万回再生ってなってて。
タキバヤシ:(ゴクリ…)
はやたく:スクロールすると1秒ごとに1万ずつ再生回数が増えるんですよ。
タキバヤシ:(ゴクリ…)
はやたく:人生はじめての経験で。めっちゃ楽しかったです。僕の大好物の油そば食べてる時より幸せでした(笑)
タキバヤシ:それでフォロワー数もうなぎのぼりに?
はやたく:そうですね。tiktokが流行り出した頃だったのですが、そこから数年は日本の男性でフォロワー数がずっと1位でした。
タキバヤシ:でもそれを維持するのは大変なんじゃないんですか?
はやたく:そうなんですよ。でもコメント欄を参考に動画をノンバーバルドラマっぽく撮り続けていたらある日、
タキバヤシ:ある日、、、
はやたく:また1つの動画がバズって、それでコメント欄を見たら、、、
タキバヤシ:見たら(ゴクリ…)
はやたく:韓国のハングル語だらけだったんですよ。
タキバヤシ:ハングル?
はやたく:そう。炎上しちゃったのかなと心配したのですが。
タキバヤシ:なにが起きたのですか?
はやたく:コメント欄を日本語に変換して読んでいたらみんながキャーって感じに盛り上がってたんです。
タキバヤシ:どういうことですか?
はやたく:韓国ドラマみたいでキュンキュンするだとか、韓国の御曹司っぽい雰囲気だとかで盛り上がってました(笑)。もうルンルンです。
タキバヤシ:なにか韓国人に刺さる要素があったんですね。
はやたく:もともと韓国ではイケメンの御曹司コンテンツが流行ってるとは知っていましたが、ここでも言葉はいらないんだなって思いました。
@wd7754 僕はまだ子供です 한국과 일본이 사이좋게 지냈으면 좋겠어. Twitter→wd77541
タキバヤシ:これもノンバーバルだったからこそ。
はやたく:そうですね。とにかく規模が広がるんですよ。だから今度は人口の多い国、例えばアメリカではどういうコンテンツが流行るのかを分析したり、それでどんどん海外向けのノンバーバル動画を展開していったんですよ。
室長・花輪:おい、タキバヤシ、正直ベースで言うとノンバーバルとかアルゴリズムとかまったくわからんからもっと直接的にバズる方法を聞き出してくれ。
タキバヤシ:じゃあ何しに来たんですか…。
室長・花輪:とにかく俺はこのあとケツカッチンだからこの辺でドロンするわ。
タキバヤシ:このあと予定あるならさっさと消えてくださいよ。なんか昭和がすぎて、すいません…
はやたく:いえいえ。
人口の多い国から攻めていく
タキバヤシ:アメリカ向けにはどういう戦略をたてたのですか?
はやたく:アメリカはオーバーリアクションな動画が刺さるんですよ。とにかく表情豊かなものが求められる。
タキバヤシ:それもまたすぐに大ヒット?
はやたく:いえ。2、3ヶ月は試行錯誤してましたが、コメディ系の動画にしたり、ドッキリ系の動画を試してたらアメリカでもばっちり刺さって。
タキバヤシ:とんでもないですね。
はやたく:次に人口の多い国はどこだろうと思って次はインド向けの動画を作ろうと動き出しました。
タキバヤシ:人口の多い国から攻めるという発想が大胆です。
はやたく:世界中のみんなに愛されたいじゃないですか。
タキバヤシ:えーっと、それでインド向けには、どんな要素が刺さるんですか?
はやたく:それを徹底的に調べたら、インドの母親は怖いらしいってことにたどり着いたんです。
タキバヤシ:怖い?
はやたく:教育面やしつけなどで他国に比べるとインドの母親は子供に厳しいとか。
タキバヤシ:インド映画でうっすらそんなイメージあります。
はやたく:なので怖い母親と息子の戦いというテーマで動画を投稿したらあっという間にバズっちゃって。いまはインドもそうですがインドネシアとかでも再生回数増えてますね。
@wd7754 母は強すぎる My mother is great.
ノンバーバル戦略の裏にあったコンプレックス
はやたく:先ほどもお伝えましたが、僕はコメント欄を参考にして動画を作っているんです。
タキバヤシ:コメント欄にあらゆる言語での反応があってまさに圧巻ですよね。
はやたく:そうなんです。基本的にファンが喜ぶ顔が見たいと思って作っています。それで自己肯定感も上がりますし。
タキバヤシ:ノンバーバルにしようとした理由はあるんですか?
はやたく:あまり声に自信がなくて低い声にコンプレックスを持っていた時期がありまして。
タキバヤシ:意外ですね。
はやたく:それであんまり喋りたくなかったっていうのもあります。その後世界で通じるには何をどうすればいいか試行錯誤を繰り返したんです。
タキバヤシ:分析されたんですね。
はやたく:そこから徹底的に分析して今は意図的にセリフを極力少なくしています。
タキバヤシ:当時は意識していなかったけど、結果的にそれが世界進出につながったと。
はやたく:そういうことです。
タキバヤシ:何もしゃべらないのに世界でバズる…言い換えるとノンバーバルこそが世界でブレイクする手段だったということですね。
はやたく:僕の場合はそうです。
タキバヤシ:正直、感覚的にやってることが全て当たっていると思ってたのですが、ものすごい分析されているんですね。
はやたく:海外に向けて発信していくという戦略は一貫しているんですけど、それとは別に戦術としてバズる方法はもちろんありますよ。
タキバヤシ:ノンバーバル戦略以外にもあるんですか?その具体的な方法、ぜひ教えて下さい。
後編へ、つづく。
取材・文:タキバヤシ
撮影:冨田味我
後編ははやたくさんが実践する具体的な「バズり手法」を解説、ロハで読めます。by花輪♡
秘伝1:あえてツッコミどころのある動画を作る。
秘伝2:驚き、笑い、共感、胸キュンの要素を入れる。
秘伝3:動画制作の、PDCAを回す。
秘伝4:マネしたくなるような動画を作る。
秘伝5:目標は高く持つ。
プロフィール:はやたく
2000年4月3日生まれ。学生の頃からSNSで自撮り発信を始め、言語に頼らないノンバーバル動画で世界的に大ブレイク。2020年にTikTokの男性部門日本1位を獲得し、現在もTikTokフォロワー970万人超え、2022年に開設したYouTubeチャンネル「HAYATAKU はやたく」もわずか2年で1000万人超えを達成。国内より海外に多くのフォロワーを持ち、TikTokでは再生回数1000万回超えの動画がいくつも並ぶ人気タレント/クリエイター。