石破は国民に説明できるのか?日本からの投資80兆円の利益9割を米国が受け取る「トランプ関税交渉」の何も見えない内容

 

前述した通り、日本側からも合意文書の開示はまだありませんが、石破首相のぶら下がり会見の動画とその書き起こしが首相官邸ホームページに掲載されています。赤沢氏の会見以上の中身はありません。

【関連リンク】米国関税措置に関する日米協議の合意等についての会見

期限とされた8月1日より一週間以上も早く、参院選直後の急展開ですが、具体的には一体どのような合意がなされたのでしょうか?

5,500億ドルの投資については、米政府系の投融資ファンドを設立するという解説もありますが、金を出すのは日本側であるにもかかわらず、利益の90%を米国が受け取るというのは一体どういうことなのでしょうか。本当にそうならあまりにも馬鹿げた話です。

また、自動車や農産物の市場開放といいますが、前述のホワイトハウスからの発表では、それ以外に防衛装備品の追加購入などへの言及もあり、気になるところです。

この話を受けて、23日(水)の株式市場では日経平均が前日終値に比べて一時1,500円超上昇しました。一方で、5,500億の投資という話が効いているのか、10年物の日本国債は売られています。

石破氏は、「舐められてたまるか」と、国益を守る交渉を粘り強く行うと繰り返していました。赤沢氏は、「任務完了」と言う以上、「国益を守る交渉をやり遂げた」という意味でなければなりませんが、これまでの言動からは、「任務完了」の言葉がどうしても軽く響きます。

自民党議員たちも赤沢氏に「大役お疲れ様でした」などと一斉にねぎらいの言葉をかけていますが、具体的な中身もわからないまま、一方的に舐められた内容である可能性が高いにも関わらず、ずいぶんお気楽なものだと感じてしまいます。

政府は、8月1日に召集されることが決まった臨時国会で、合意の内容についてつまびらかに報告する義務がありますが、果たして国民が納得する説明が出来るのでしょうか?

(本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2025年7月25日号の一部抜粋です。「参院選を振り返る」と題した「今週のメインコラム」、「水素酸素発生器」の効用を紹介する「今週のオススメ!」、「経産省による楽天グループAI開発に対する支援への疑問」にアンサーした「読者の質問に答えます!」、「自分の横顔のチェック」を促す「スタッフ“イギー”のつぶやき」を含むメルマガ全文をお読みになりたい方は、この機会にぜひご登録ください)

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

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